NY市場サマリー(14日)株小反発 ドル上昇 長期金利上昇
<為替> ドルがユーロや円などの主要通貨に対し上昇した。トランプ米大統領が週末の間にメキシコと欧州連合(EU)に30%の関税を適用すると発表したものの市場は大きく反応せず、米国の物価情勢を見極めようと15日に発表される6月の消費者物価指数(CPI)が注目を集めている。
トランプ氏は12日、メキシコとEUに8月1日から30%の関税を適用すると発表。欧州委員会のシェフチョビッチ委員(通商担当)はこの日、EU加盟国の閣僚と協議を行い、米国との交渉が失敗に終われば、EUは対抗措置を取る必要があるという見解で一致したと明らかにした。
ただ、トランプ氏が4月2日に発表した大規模関税措置の実施を延期するなど政策が二転三転する中、市場は関税関連のニュースにあまり反応しなくなっている。FXストリートのシニアアナリスト、ジョセフ・トレビサーニ氏は「これまでもたびたび起きていることで、衝撃的な影響はもはやない」と述べた。
トランプ大統領はこの日、ホワイトハウスで北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長と会談し、ロシアの侵攻を受けるウクライナにNATO経由で最新鋭兵器を供与すると明らかにすると同時に、ロシアが50日以内に和平合意に応じなければロシアに制裁を科すと表明。これまでのロシアへの対応を大きく転換させた。こうした動きもドルの支援要因になった。
トランプ政権が掲げる関税措置を巡り、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が夏の間にインフレが上昇するとの見方を示す中、市場は米労働省が15日に発表する6月のCPIに注目。ロイターが実施したエコノミスト調査では、6月の総合インフレ率は前年比2.7%、コアインフレ率は3.0%と、前月のそれぞれ2.4%と2.8%から上昇したとの予想が示された。
終盤の取引で主要通貨に対するドル指数は0.19%高の98.07。
ドル/円は0.22%高の147.72円と、6月23日以来の高値を付けた。
ユーロ/ドルは0.16%安の1.167ドル。一時1.1649ドルと、3週間ぶりの安値を付けた。
暗号資産(仮想通貨)ビットコインはこの日の取引で初めて12万ドル台に乗せ、過去最高値を再度更新。NY市場終盤の取引では0.42%高の11万9633ドルで取引された。
<債券> 長期債利回りが不安定な取引の中、一時数週間ぶりの高水準を付けた。市場では、パウエル連邦準備理事会(FRB)の議長解任の可能性を巡り警戒感が漂っている。
国家経済会議(NEC)のハセット委員長は13日、FRBは首都ワシントンの本部改修費用に関して多大な説明責任があると指摘した上で、状況によってはトランプ大統領がパウエルFRB議長を解任する権限を得ることになるとの見方を示した。
アプタス・キャピタル・アドバイザーズ(アラバマ州フェアホープ)の債券アナリスト兼ポートフォリオ・マネージャー、ジョン・ルーク・タイナー氏は、「パウエル氏の解任を巡る話は、金融政策に対する同氏の姿勢を非難するトランプ大統領と政権によるものであり、現実的な脅威ではない」と指摘。パウエル氏の解任は、FRBの独立性に対する攻撃となるため、短期的には市場にとって非常に悪い影響を与えるとの見方を示した。
トランプ大統領は12日、8月1日から欧州連合(EU)とメキシコに30%の関税を適用すると発表。またこの日、トランプ大統領は、ウクライナ紛争の停戦で合意が得られなければ、米国は50日以内にロシアに「非常に厳しい関税」を課すと表明したが、債券市場の反応はいずれも限定的だった。
米30年債利回りは1.4ベーシスポイント(bp)上昇の4.971%となった。一時、5%をわずかに下回る5週間ぶりの高水準を記録した。
この日は、財政懸念を背景に日本の債券市場が大幅続落。ドイツ30年債利回りも約2年ぶりの高水準を付け、同利回りもこれに追随する形で上昇した。
指標となる10年国債利回りはわずかに上昇し、4.427%となった。取引序盤に一時、4週間ぶりの高水準となる4.441%を付けた。
一方、2年債利回りは、1.8bp低下の3.896%。
2年債と10年債の利回り格差は52.7bp。一時、54.2bpと、約2週間ぶりの水準まで拡大した。
<株式> 小反発。トランプ米大統領による欧州連合(EU)などへの関税表明には反応薄で、週内に発表される経済指標や決算シーズン開始に注目が集まっている。 トランプ氏は12日、メキシコと欧州連合(EU)に8月1日から30%の関税を適用すると発表。EUは米国に対する対抗措置の停止期間を8月上旬まで延長し、交渉による解決を引き続き目指す方針を明らかにした。ホワイトハウスはEU、カナダ、メキシコとの交渉は続いていると述べた。 トランプ氏による関税の警告にもかかわらず、市場はここ数週間、好調に推移している。ナスダック総合は過去最高値でこの日の取引を終え、6月27日以降7回目の最高値更新となった。
グレンミードの投資戦略・調査責任者ジェイソン・プライド氏は、当初はトランプ政権の関税政策が米経済に打撃を与えると懸念されたが、これまでに発表された関税は大統領の看板経済政策を盛り込んだ法案の成立によっておおむね相殺される見込みのため、市場は景気見通しについて自信を深め始めていると指摘した。
トランプ氏の政策がどのように影響しているかを示す兆候は、今週発表の経済指標などで明らかになる見通しだ。
第2・四半期決算シーズンは15日に始まり、複数の米銀大手が決算を公表する。15日には6月の米消費者物価指数(CPI)も発表される。
S&P総合500種の主要11セクターではエネルギーが1.2%安。トランプ氏がロシアから原油などを輸入する第三国に「二次制裁」を科す可能性があると表明したことを受け、原油価格が下落した。
一方、大半のセクターはプラス圏で取引を終え、通信サービスが上げを主導。17日に決算を発表するネットフリックスや、「スーパーマン」新作が週末の北米興行収入でトップに立ったワーナー・ブラザース・ディスカバリーに買いが入った。
暗号資産(仮想通貨)ビットコインが初めて12万ドルを突破したことを受けて関連株が買われ、コインベースが1.8%、マイクロストラテジーが3.8%、それぞれ上昇した。
米取引所の合算出来高は154億3000万株。直近20営業日の平均は176億2000万株。
<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先 物相場は、利益確定の売りに押され、4営業日ぶりに反落した。
中心限月8月物の清算値 (終値に相当)は前週末比4.90ドル(0.15%)安の1オンス=3359.10ドル。
金塊相場が前週末に清算値ベースで2週間超ぶりの高値水準を付けた反動から利益確定 の売りが出た。また、外国為替市場では対ユーロでドル買いが優勢。ドル建てで取引され る商品に割高感が生じ、金が売られた。
ただ、トランプ米大統領は12日、欧州連合(EU)とメキシコに30%の関税を8月 1日から課すと表明。米関税政策を巡る不透明感から安全資産として金を買う動きもあり、 金相場の下値は限定的だった。EUのフォンデアライエン欧州委員長は13日、トランプ 米政権による鉄鋼・アルミニウム関税に対する報復措置の発動時期を当初7月14日から 8月初旬まで延期する方針を発表。交渉の進捗(しんちょく)状況を見極めたいとする市 場参加者も多い。
週内に発表される米消費者物価指数(CPI)などの物価統計や主要企業の決算を前に様子見ムードも広がっている。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先 物相場は、対ロシア制裁の内容が想定ほど厳しくなかったとの受け止め方から利食い売りが広がり、反落した。
米国産標準油種WTIの中心限月8月物の清算値(終値に相当)は、前週末比1.47ドル(2.15%)安の1バレル=66.98ドル。9月物は1.23 ドル安の65.81ドルだった。
トランプ米大統領は14日、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対し、50日以内に停戦 合意に応じなければ高関税を含む経済制裁を課す考えを表明。一方、ウクライナに対しては、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国を経由する形で武器を追加供与する方針を明らかにした。制裁が強化されれば、ロシア産石油の供給が一段と細る可能性はあるものの、 即時発動とせずに一定の猶予期間を設けたことで、交渉の余地を残したとの見方が拡大。 市場ではひとまず買い持ちを解消する動きが活発となった。
また、米国と各国・地域との貿易摩擦激化に伴うエネルギー需要の減退懸念も相場を圧迫。トランプ氏は12日、欧州連合(EU)とメキシコに対し30%の関税を8月1日か ら課すとの書簡をSNSで公表した。先週は、日本や韓国、カナダなど計23カ国に新たな関税率を通知したほか、残りの全ての国に15─20%の関税を課すと警告。8月物は朝方以降、ジリ安となり、取引終盤には66ドル台で取引された。