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アングル:新NISAマネー、一方的な円売りにあらず 通説に変化か

2025年07月10日(木)16時00分

 7月10日、新NISA(少額投資非課税制度)経由の個人マネーは一方的な円売り圧力──この通説が今後、当てはまらなくなるかもしれない。写真は円紙幣のイメージ。2017年6月撮影(2025年 ロイター/Thomas White)

Atsuko Aoyama

[東京 10日 ロイター] - 新NISA(少額投資非課税制度)経由の個人マネーは一方的な円売り圧力──この通説が今後、当てはまらなくなるかもしれない。ここにきて海外資産の処分売りとみられる動きが加速しており、相場動向に応じて個人が機動的に売買を行う姿が浮き彫りになっている。

財務省が8日発表した6月の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、国内投資信託委託会社などの「株式・投資ファンド持ち分」への投資が5193億円の買い越しとなった。この数字は、新NISAなどによる個人の海外株式投信の売買動向を反映するとされる。

買い越し幅は前月の3987億円からは小幅に増加したが、前年同月の1兆0005億円のほぼ半分。取得(購入)の規模は変わらないものの、処分(売却)が約5000億円増加した。

<家計も機動的に「逆張り」>

買い越し自体は引き続き維持され、NISAでの積み立てを通じた「日本からの構造的な資金流出が進む状況」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)には変わりない。

もともと、新NISAは長期的な資産形成を支援する制度で、短期的な売買には不向きとされる。損失を他口座で相殺する損益通算を行えないため、税務負担が軽減できないほか、中長期投資を前提とした商品も多い。このため、NISAを通じた対外投資は、為替の需給面で底流にある円安圧力として注目されてきた。

一方、年間240万円までの成長投資枠を使えば、短期目線での売買も可能だ。

ニッセイ基礎研究所主席エコノミストの上野剛志氏は、家計部門の動きについて「相場が下がった場面では買い、戻った途端に売るという相場の潮目を読んだ機動的な逆張り投資をしている可能性もある」と推測する。

実際、財務省の統計を上期(1―6月)ベースでみると、取得(購入)が前年と比べて約3兆円増えたのに対して、処分(売却)も約4兆円増加している。また米国の株安と同時に、ドル安/円高傾向にあった3―4月の2カ月は取得がそれぞれ4兆2286億円、3兆8818億円と、2005年の統計開始以降で最大規模に膨らんだ。

2月中旬まで6000台で推移していたS&P500種指数は、3月は5500台まで下落し、4月には5000を割り込んでいた。

ニッセイ基礎研の上野氏は成長投資枠などを使った家計の機動的な売買が増えれば、「円高・海外株安が進むと買いが増えて円高を抑制し、円安・海外株高が進めば円安を抑制し得る」とみている。

(青山敦子 編集:橋本浩)

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