ニュース速報
ビジネス

米EV税額控除終了近づく、自動車各社売り込みに躍起

2025年07月10日(木)13時03分

7月9日、米国でこの秋、電気自動車(EV)の購入時に適用される7500ドルの税額控除制度が終了するのを前に、自動車メーカーは顧客にEV購入の機会を逃さないよう呼び掛けている。写真はテスラのEV、テキサス州で5月撮影(2025年 ロイター/Eli Hartman)

Nora Eckert Abhirup Roy

[デトロイト 9日 ロイター] - 米国でこの秋、電気自動車(EV)の購入時に適用される7500ドルの税額控除制度が終了するのを前に、自動車メーカーは顧客にEV購入の機会を逃さないよう呼び掛けている。

テスラは8日、自社ホームページに「連邦税7500ドルの税額控除が終わる。25年9月30日までに納車を受けよう」というバナー広告を掲載した。

フォード・モーターは同じ日に、家庭用EV充電器と設置を無料で提供する販売促進活動の期限を9月末まで延長すると発表した。

米議会が承認した包括的な減税・歳出法案によって、新車EVの購入またはリースに対する7500ドルの税額控除と中古EVに対する4000ドルの控除が9月末で終わる。こうした助成金はEVの販売台数をここ数年間押し上げてきたが、税額控除制度が終了する前に駆け込み需要が発生すると予想するディーラーやアナリストがいる。

新興EVメーカー、リビアン・オートモティブのクレア・マクドノー最高財務責任者(CFO)氏は8日のインタビューで「今はEV購入を検討する絶好の時期だ」と語った。

EVに対する需要は2020年代初めに急拡大した後で既に減速している。自動車業界の経営幹部やアナリストは、税額控除がなくなれば販売が落ち込む可能性があると警告している。

ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は24年12月に「7500ドルの税額控除が需要を後押ししている。なくなれば需要が鈍化する」と述べた。

カリフォルニア大学バークリー校、デューク大学、スタンフォード大学の教授らが24年11月公表した共同研究によると、EV登録台数は税額控除がなければ27%減少する可能性がある。

こうした政策変更は他国でもEV普及に影響を与えている。たとえばドイツは23年末に助成金制度を終了した後にEV販売が急減した。

米議会は08年にEVとプラグインハイブリッド車(PHV)向けに7500ドルの税額控除制度を承認した。22年のインフレ抑制法で控除制度は延長されたが、米国内で製造され、米国製バッテリーや素材を一定程度使用したEVだけを控除対象とした。

バークレイズのアナリストはノートで「EVの駆け込み購入が第3・四半期に大幅に増え、その後数カ月間は急激に落ち込むだろう」と予想した。

EVは充電インフラの不足や価格の高さがネックと各種調査は示す。コックス・オートモーティブのデータによると、EVの平均新車販売価格は25年5月時点で約5万8000ドルと業界全体の平均価格よりもほぼ1万ドル高い。

トランプ米大統領の政権運営メンバーは就任前の24年末からEVの税額控除制度を廃止する戦略を練っていた。こうした動きに早くから気付いてEVを購入した消費者もいる。

オートフォーキャスト・ソリューションズのサム・フィオラーニ副社長は「まだEVを買っていない人ならば、第3・四半期に購入したいと思うようになるだろう。消費者は今や購入期限が迫っていると考えている」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、11月に年次株主総会開催

ビジネス

セブン&アイCFO、クシュタールとの協議「最終的な

ワールド

インド太平洋が「米外交政策の焦点」、ASEAN会議

ワールド

イランのIAEA協力再開、「二重基準」是正が条件=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 7
    【クイズ】 現存する「世界最古の教育機関」はどれ?
  • 8
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中