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アングル:トランプ氏とマスク氏の確執、世界の株式市場に打撃も

2025年06月09日(月)09時11分

トランプ米大統領と、側近から敵へと転じた米電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の確執は、政治ドラマとして世界中を魅了する一方、テスラが上場する米株式市場にもたらすリスクも浮き彫りにしている。ニューヨーク証券取引所のフロア。スクリーンにはマスク氏とトランプ氏が映る。5月30日撮影(2025年 ロイター/Jeenah Moon)

Lewis Krauskopf

[ニューヨーク 6日 ロイター] - トランプ米大統領と、側近から敵へと転じた米電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の確執は、政治ドラマとして世界中を魅了する一方、テスラが上場する米株式市場にもたらすリスクも浮き彫りにしている。

マスク氏とトランプ氏がソーシャルメディア(SNS)で互いを罵倒し、トランプ氏がマスク氏の企業に対する政府との契約を打ち切ると脅したことを受けて、テスラの株価は5日に前日比で14%下落した。

テスラ株は6日に小幅反発したものの、5日の下落は最も注視されている株価指数のいくつかを押し下げた。テスラ株の下落は5日のS&P500種株価指数とナスダック100指数の下落の約半分を占めた。それぞれ0.5%、0.8%下落した。

S&P500種は一般的に米国株式市場の指標とされ、ハイテク株の比率が高いナスダック100指数は、最も人気がある上場投資信託(ETF)の一つである「インベスコ・QQQ・トラスト」が連動した運用を志向している。

ダコタ・ウェルスのシニア・ポートフォリオ・マネージャー、ロバート・パブリック氏は「指数のかなりの部分を占めるこの大企業(テスラ)が売られると、指数全体に影響するだけでなく、投資家にも心理的な影響を与える」と指摘する。

テスラの株価下落は、多くの投資家が以前から警告してきたように株価指数が一握りの巨大銘柄に大きく左右されるリスクを示している。テスラはマグニフィセントセブン(超大型ハイテク7銘柄)の中では時価総額が最も小さく、2023年と24年の株価指数の上昇をけん引していた。マグニフィセントセブンは25年に入って低迷していたが、最近は回復している。

アップル、マイクロソフト、エヌビディアを含めたマグニフィセントセブンは、5日終値の時点でS&P500種のうち3分の1弱の割合を占めている。

ストラテガスのETF・テクニカルストラテジスト、トッド・ソーン氏は「もしもあなたが投資家で、S&Pやナスダック100を保有しているならば(中略)非常に小さな銘柄群に多くのエクスポージャーを持っていることを認識する必要がある」と指摘する。

5日のテスラ株の下落はS&P500種、ナスダック100での割合がそれぞれ1.6%、2.6%だったのに対し、時価総額は約1500億ドル消失した。

テスラ株は6日にいくらか反発し、日中に約5%上昇して時価総額は約9700億ドルを付けた。時価総額が3兆ドルを超えているマイクロソフト、エヌビディアは5日時点のS&P500種の割合でそれぞれ6.9%、6.8%を占めた。

テスラの株価は昨年12月中旬以降に約37%下落した。この間にS&P500種の下落は約1%にとどまり、テスラの指数への影響力が低下したことを意味する。

一方、テスラ株はETFの間で幅広い影響力を持つ。ソーン氏によると、テスラは世界に約4200あるETFのうち約10%の構成銘柄に含まれている。その中には今月5日に2.5%下落した資本財セレクト・セクターSPDRファンドや、2.6%下げたラウンドヒル・マグニフィセント・セブンがある。

ソーン氏は「多くのETFは(構成銘柄が)重複しているため、全てのETFの中身を総合的に把握することが非常に重要だ」と言及した。

ロイター
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