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カナダ中銀、政策金利を2.75%に据え置き 先行き利下げに含み

2025年06月05日(木)03時10分

カナダ銀行(中央銀行)は4日の会合で、市場予想通り政策金利を2.75%に据え置いた。写真はオンタリオ州オタワにある同中銀前で5月撮影(2025年 ロイター/Blair Gable)

Promit Mukherjee David Ljunggren

[オタワ 4日 ロイター] - カナダ銀行(中央銀行)は4日の会合で、市場予想通り政策金利を2.75%に据え置いた。据え置きは2会合連続。米国の貿易政策の影響を見極める必要があるとした。ただ、関税の影響で経済が弱体化した場合は追加利下げが必要になる可能性があるとの見方を示した。

マックレム総裁は記者会見で「米国による貿易摩擦は、依然としてカナダ経済が直面する最大の逆風だ」と述べ、米国の貿易政策は極めて予測不可能だと指摘。「より多くの情報が得られるまで政策を変更しないという明確な合意があった」と述べた。

カナダ銀行は、物価上昇圧力と成長鈍化によるインフレ下降圧力を検証している。    

マックレム総裁は、カナダ経済は軟調ではあるものの急激に弱まっているわけではないとの見方を示すと同時に、基調的なインフレ率は同中銀が予想していたよりも強い可能性があると指摘。「全体として、政策担当者らは、米国の関税や不確実性に直面して経済が弱まり、インフレに対するコスト圧力が抑制されれば、政策金利の引き下げが必要になる可能性があると考えた」と述べた。    

カナダの4月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は1.7%となり、3月の2.3%から鈍化した。ただ、中銀が重視するコアCPIの2つのうちCPI中央値は3.2%と、2024年3月以来の高水準だった。   

マックレム総裁は「コアインフレ率の上昇は、食品を含む商品価格の上昇が一因で、貿易混乱の影響を反映している可能性がある」とした。最近の調査では消費者が価格上昇に備えており、多くの企業が関税コストを転嫁する意向を示しているとも述べた。

さらに、「異例の不確実性に直面し、政策理事会はリスクに特に注意しながら慎重に進めている」と述べ、インフレを抑制しつつ経済成長を引き続き支援する意向を示した。

関税の影響、貿易交渉の結果、新たな貿易措置に関する不確実性が続いているため、同中銀は予防的な姿勢を弱めることになるとし、4月と同様の発言を繰り返した。

CIBCのマネージングディレクター兼チーフエコノミスト、エイブリー・シェンフェルド氏は「失業率がわれわれの予想通り上昇を続け、関税圧力を受けない品目のインフレが若干緩和すれば、7月に0.25%ポイントの利下げが行われる可能性が高まりそうだ」と述べた。

エコノミストは、今年はさらに2─3回の利下げが行われ、年末までに政策金利は2%前後になると予想している。

通貨スワップ市場が織り込む、7月30日の次回政策決定で再び金利据え置きとなる確率は約54%。

カナダの第1・四半期の経済成長率は予想を上回ったものの、企業投資と国内支出は概ね低調だった。エコノミストはこの傾向が今後も続くと予想している。マックレム総裁も、第2・四半期の成長率は大幅に低下すると述べた。

ロイター
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