OECD、世界経済見通し引き下げ トランプ関税が米経済に打撃

6月3日、経済協力開発機構(OECD)は、公表した最新の経済予測で、トランプ政権の貿易戦争により米経済が大きな打撃を受けているとし、世界経済見通しを下方修正した。ブラジル・サントスの港で2024年5月にドローン撮影(2025年 ロイター/Amanda Perobelli)
Leigh Thomas
[パリ 3日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)は3日に公表した最新の経済予測で、トランプ政権の貿易戦争により米経済が大きな打撃を受けているとし、世界経済見通しを下方修正した。
世界経済の成長率は昨年の3.3%から2025年と26年に2.9%に鈍化する見通し。3月時点の予想は25年が3.1%、26年が3.0%だった。
OECDのマティアス・コーマン事務総長は「貿易障壁の増加や政策を巡る不確実性の長期化は成長見通しをさらに押し下げ、関税を課している国々のインフレ率を押し上げる可能性が高い」と述べた。
米国が5月中旬時点と比較して全ての国に対する2国間関税をさらに10%ポイント引き上げた場合、世界の生産は2年後に約0.3%押し下げられると指摘。「このような状況において、重要な政策的優先事項は、現在の貿易摩擦を永続的に解決する建設的な対話だ」と語った。
OECDは保護主義が強まり、インフレがさらに加速し、サプライチェーン(供給網)の混乱や金融市場の動揺を招けば、成長見通しはさらに弱まる可能性が高いと指摘する。
トランプ大統領が1月の就任以降に発表した関税措置はすでに金融市場の混乱や世界的な景気先行き不透明感の高まりにつながっており、トランプ氏は当初打ち出した強硬姿勢の一部後退を余儀なくされている。
OECDは5月半ばに導入された関税が25年中と26年も引き続き維持されると仮定し、米経済成長率は今年が1.6%、来年は1.5%にとどまると予測した。
25年の成長率見通しは従来予想の2.2%から大幅な下方修正となった。26年の従来予想は1.6%だった。
OECDは、新たな関税が米国で製造するインセンティブを生み出す可能性はあるものの、輸入価格の上昇により消費者の購買力が圧迫され、経済政策の不確実性により企業投資が抑制されると警告した。
一方、関税収入の増加は、2017年に導入された減税・雇用法の延長や新たな減税、景気減速による歳入減少の一部しか補えないと指摘した。
OECDは米関税引き上げによる中国へ影響については、携帯電話や家電製品といった消費財の下取りプログラム向け補助金や福祉給付の増額によって一部相殺されるとみている。
中国の成長率は25年が4.7%、26年は4.3%と予測した。従来予測(25年4.8%、26年4.4%)からほぼ変わらずだった。
ユーロ圏の見通しは3月から変わらずで、25年が1.0%、26年が1.2%。堅調な労働市場と利下げに支援されるという。またドイツの公共支出増加が26年の成長率を押し上げる見込みという。
英国の成長率は25年が1.3%、26年は1.0%の見通し。3月時点の予測は25年が1.4%、26年が1.2%だった。
日本の成長率見通しは25年が0.7%と従来の1.1%から下方修正された。一方、26年は従来の0.2%から0.4%に上方修正された。