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日銀市場会合、超長期債巡る意見多数 減額ペースで見解分かれる=要旨

2025年06月02日(月)18時34分

 2日、日銀は、5月20―21日に開催した債券市場参加者会合の議事要旨を公表した。写真は日銀本店。1月23日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada

[東京 2日 ロイター] - 日銀が2日に公表した債券市場参加者会合の議事要旨では、超長期債の扱いを巡る意見が多く見られた。2026年4月以降の国債買い入れ減額ペースについては、四半期4000億円の維持を支持する意見や2000億円程度に落とすべきとの声が会合初日の公表資料より増えた。市場からも、今月の金融政策決定会合での国債買い入れ計画の中間評価では、26年4月以降の減額ペースは維持もしくは減速ではないかとの見方が出ている。

<超長期債、年限区分の統合には賛否>

議事要旨によると、ある参加者は「超長期の状況が中長期にも波及し、悪影響を及ぼす可能性もある」と指摘。市場機能や流動性を注視し、場合によっては臨時の買い入れや残存期間別の買い入れ金額を変更するなど「柔軟に対応する余地を排除しないことが望ましい」と述べた。

残存10―25年と25年超に分かれている超長期ゾーンの年限区分については、区分の統合を巡って意見が分かれた。「より需給環境に応じた買い入れがなされるようになる」として年限区分の統合を支持する参加者がいた一方で、ある参加者は「現時点で統合すると、残存が長いものが多く買い入れられ、意図しない買い入れデュレーションの長期化が生じかねない」として、統合は買い入れ金額が少なくなる将来のオプションだと主張した。

「超長期ゾーンの買い入れ額が多い段階で年限区分を統合すると、価格形成に急な変化が生じ、予期しないショックが生じたと市場に受け止められる可能性もある」ため、年限区分の統合は慎重に検討すべきとの意見も出た。

超長期債の買い入れについては「安易に増額すると市場の期待がコントロールできなくなり、先行きの減額に支障が生じるリスクがある」として、「基本的には、さらなる減額のタイミングを慎重に見極めるといった対応にとどめるべき」との意見も見られた。

<26年4月以降の買い入れペース>

26年4月以降の国債買い入れ減額ペースについて、ある参加者は、望ましい月間買い入れ金額の水準を示した上で「当該水準に達するまでは、現行ペースで減額を続けるのが良い」と述べた。一方で、日銀の適正な国債保有残高の見極めが困難な中では、市場の反応を見つつ減額を進めていくといった「一定の慎重さが必要だ」とし、減額幅を2000億円程度に縮小させることが望ましいと主張した参加者もいた。

計画期間末時点の月間買い入れ額については、「1.5―2兆円程度」まで現行の減額ペースを続けるのが望ましいとの意見が追加された。

このほか、国債補完供給の減額措置の要件緩和や要件緩和の対象銘柄拡大を支持する意見も議事要旨では増えていた。

<国債買い入れ中間評価は>

日銀は16日、17日の金融政策決定会合で国債買い入れ計画の中間評価を行う。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、債券市場参加者会合の議事要旨を踏まえれば、26年3月までの現行計画を維持した上で「26年度は減額ペースの維持か減速のどちらかになるのではないか」と話す。

超長期債の年限区分統合については「市場の思惑が盛り上がっていた割に、賛否バランスの取れた内容だった」と指摘、区分が統合される可能性は低いとみている。

日銀は5月20―21日に債券市場参加者会合を開き、初日に金融機関の担当者から事前に調査した意見を取りまとめた資料を公表済みだが、議事要旨には事前調査分に加え会合当日に出た主な意見が掲載されている。

ただ、実際にそれぞれの意見ごとにどの程度の金融機関が支持しているのか、その量感は議事要旨では明らかになっていない。

ロイター
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