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5月ロイター企業調査:トランプ関税、5割超が「悪影響」も8割が賃上げ継続

2025年05月22日(木)10時02分

5月のロイター企業調査で米国の関税政策の影響を聞いたところ、「大いに」と「ある程度」を合わせ5割以上がマイナスに作用すると答えた。4月17日撮影のイメージ写真(2025年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)

Tetsushi Kajimoto

[東京 22日 ロイター] - 5月のロイター企業調査で米国の関税政策の影響を聞いたところ、「大いに」と「ある程度」を合わせ5割以上がマイナスに作用すると答えた。関税の逆風下でも8割超の企業が賃上げを続ける意向を示したが、6割以上が日銀に利上げの停止を求めた。

調査は5月7日―16日。調査票発送企業は504社、回答社数は224社だった。

トランプ米大統領の関税措置について、54%は「ある程度のマイナス影響」があると答え、9%が「大いにある」とした。34%はあまりないと答え、2%は「全くない」とした。「プラスの影響」はゼロだった。

「日本で生産された自動車の米国輸出の落ち込みが想定され、自動車分野向け販売数量の低下が予想される」(化学)、「特に自動車部品についてマイナスの影響が懸念される」(機械)、「自動車、自動車部品などの輸出貨物量が減少し、施設使用料等の収入も大幅に減少する」 (運輸)をはじめ、日本の基幹産業として裾野が広い自動車製造への影響を危惧するコメントが多数寄せられた。

このほか製造業からは「米国子会社の原材料仕入額高騰に対し、すべてを価格転嫁するのは難しい」(化学)、「資材価格やエネルギー価格上昇の影響があると予想される」(建設)など生産コスト上昇を懸念する声が多かった。

サービス業からは「製造業を中心にシステム開発投資が減退する可能性が高い」(情報サービス)、「仕入れ代金の上昇により、売上高の伸びが抑えられる可能性がある」(小売)、「百貨店事業に係るインバウンド消費及び中国事業に影響があると考えられる」(小売)といった声が出ていた。

対応策を尋ねたところ、 56%が顧客への価格転嫁、26%がサプライチェーン(供給網)の組み換え、17%がリストラ、9%が輸出先変更を選んだ。

一方、事業を取り巻く環境が関税で混乱する中でも83%の企業が賃上げには「影響がない」と答えた。一時金やベア幅を縮減する可能性があるとの答えが16%あったが、賃金を引き下げるとの回答はゼロだった。

「米国の政策とは関係なく、賃上げしないとリソースが確保できないと考えている」(機械)、「理系人材の確保が年々難しくなっており、トランプ関税の影響に関係なく優秀な人材の確保の面で賃上げを行っている」(化学)など、労働人口の減少を背景にした人手不足が影響しているとみられるコメントが目立った。

日銀の金融政策に対しては、65%の企業が利上げ停止を、10%が利下げを求めた。利上げ継続を求めた25%の企業の中でも、次の利上げ時期として42%が10ー12月を希望すると選択した。7ー9月期は36%、来年前半は20%は、来年後半は2%だった。

「関税政策の不確かさの影響を見極めるためにも、一時的な利上げ停止も必要ではないか」(機械)、「現状での利上げは企業、個人ともに投資・購買意欲の低下につながる」(輸送用機器)、「ここで利下げをすると、デフレに戻る可能性がある」(情報サービス)、「関税による輸出減に円高となってしまうとダブルパンチとなり、輸出を中心とする産業に影響が大きい」(電機)などの意見が出ていた。

一方、「経済の新陳代謝を促す意味でも適度な金利は必要と感じている」(化学)、「過度な物価上昇を抑えつつも円高方向へ進行してほしい」(空運)など、利上げの継続を望む声も少なくなかった。

(梶本哲史 グラフィックス作成:照井裕子 編集:久保信博)

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