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インタビュー:自動車産業の再編「簡単ではない」、投資機会は増も=JICキャピタル社長 

2025年05月21日(水)12時19分

 5月21日、 官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)の完全子会社で、投資・運用を手がけるJICキャピタル(JICC)の池内省五社長(写真)はロイターとのインタビューに応じ、環境が変わる中でも自動車産業の再編は「簡単ではない」とする一方、関連企業への投資機会が今後増える可能性があるとの見方を示した。都内で20日撮影(2025年 ロイター/Miho Uranaka)

Miho Uranaka Sam Nussey

[東京 21日 ロイター] - 官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)の完全子会社で、投資・運用を手がけるJICキャピタル(JICC)の池内省五社長はロイターとのインタビューに応じ、環境が変わる中でも自動車産業の再編は「簡単ではない」とする一方、関連企業への投資機会が今後増える可能性があるとの見方を示した。

JICCは自動車産業を主要な投資対象と位置づけ、23年にはホンダが一部株式を保有する部品大手Astemo(アステモ、旧日立アステモ)への出資を決めた。池内氏は「もともと6─7割がガソリン車向けの部品だった企業だが、EV(電気自動車)向けへと事業ポートフォリオを転換するという意向に賛同した」と背景を説明した。

日本経済をけん引してきた自動車産業は、電動化の流れや中国市場の低迷と現地メーカーの台頭などで岐路に立ち、ホンダと日産自動車が一時統合を模索するなど大きな変化に直面している。米国の関税政策も追い打ちをかける。

池内社長は「(再編の)議論はされている。相談も受ける」と説明。一方で「いざ再編されるかというと、そんなに簡単ではない」と語った。EV市場が拡大しない中で、中小の部品メーカーの多くはガソリン車向けビジネスから足を踏み出すのに躊躇(ちゅうちょ)しているという。

事業の構造転換には先行投資が欠かせないが、十分な財務余力を持つ企業ばかりではない。JICの設立母体である経済産業省も対応に苦慮しているのが実情だ。

帝国データバンクによると、日本の自動車メーカー10社のサプライチェーン(供給網)を構成する企業は約6万8000社。売上規模でみると、10億円未満の企業が全体の76.5%を占め、100億円未満まで広げると95.9%に上る。

池内氏は「環境の変化に応じて、投資機会が増える可能性はある」と述べた。

JICCは、昨年約9000億円で買収したJSRを中核に半導体材料業界の再編を進める方針を示している。

池内氏は、投資対象について「再編によってグローバル競争力の向上が見込める分野でなければ意味がない」と強調。半導体に加え、エネルギーやヘルスケアなども視野に入れる。

半導体業界の企業が手がける部材や装置、ソフトウエアはすでに一定の競争力を持つ一方で、対策を講じなければ競争力が低下するリスクもあるという。スケールメリットの拡大や製品力の強化によって、世界的な競争力をさらに高められるかどうかが、投資判断の起点だと語った。

*インタビューは20日に行いました。

(浦中美穂、Sam Nussey 編集:久保信博)

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