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次期EU予算はより柔軟で焦点絞る、新財源も必要=欧州委員長

2025年05月21日(水)09時51分

5月20日、欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、2028―34年の7年間の次期EU予算について、これまでよりも柔軟にして焦点を絞ると述べた。9日、ブリュッセルで撮影(2025年 ロイター/Piroschka van de Wouw)

[ブリュッセル 20日 ロイター] - 欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、2028―34年の7年間の次期EU予算について、これまでよりも柔軟にして焦点を絞るとともに、新型コロナウイルス禍に対応した復興基金への加盟国の拠出を返済するための新たな財源が必要だとの見解を示した。近年の世界の劇的な変化に適応するため、EUの国内総生産(GDP)の1%強に相当する予算の組み方を再考する必要があるとも指摘した。

27カ国が加盟するEUの予算を巡る会議で語った。フォンデアライエン氏は「新たな普通は、(現在の)普通ではない」とし、地政学的緊張の高まり、世界的な貿易戦争、気候変動による異常気象、人工知能(AI)による技術革新などが新たな課題をもたらすと言及した。

また、現行の21―27年の予算については、19―20年の予算交渉時に総額1兆2000億ユーロの予算のうち90%が既に厳格に割り当てられていたと紹介した上で、次期予算はもっと柔軟でなければならないとの見解を示した。

その根拠として「AIのような新技術について考えてみよう。現在の予算が交渉されていた時、私たちはAIが人間の理性に近づくのは50年ごろになると考えていた。今は、来年には既にそうなっていると予想している」とし、「明日の予算は迅速に対応する必要がある。暴風雨、洪水、熱波のような自然災害について考えてほしい。次の災害がいつ、どこで起こるかは誰にも予測できない」と話した。

その上で、EUの限られた予算があまりにも多くのプロジェクトに薄く分散しているため、次期予算はより焦点を絞ったものにしなければならないと訴えた。

新型コロナ禍の21年に設立した復興基金の経験を生かし、次期予算では合意したプロジェクトが目標を達成した際に加盟国から支出された基金が払い戻される仕組みにする。フォンデアライエン氏は「なぜならばこれが物事を成し遂げるための最も強力なインセンティブになるからです」とし、次期予算では基金の申請手続きをより簡素化しなければならないとも付け加えた。

次期予算では、各加盟国が復興基金に拠出した総額3380億ユーロ(3800億ドル)の返済を段階的に始める必要がある。58年までに全額を返済しなければならない。

欧州委の試算では、既に逼迫しているEUの年間予算は返済によって20%削減され、対策を講じなければ現在の政策の資金調達も不可能になる。

フォンデアライエン氏は「新たな資金源が必要だ。新しい優先課題に資金を供給し、次世代EUのために調達した融資の返済を開始しなければならない。国家予算だけではその負担に耐えられないのは明らかだ。よって新たな財源が必要だ」と強調した。

ロイター
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