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焦点:「米国産日本車」逆輸入案も、トランプ関税譲歩狙う 近く赤沢氏訪米

2025年05月20日(火)15時05分

トランプ米政権との関税交渉を巡り、赤沢亮正経済再生相が近く訪米し、3度目の閣僚協議を行う。写真は米テキサス州サンアントニオのトヨタ工場で作業する労働者。2023年4月撮影(2025年 ロイター/Jordan Vonderhaar)

Takaya Yamaguchi Kentaro Sugiyama

[東京 20日 ロイター] - トランプ米政権との関税交渉を巡り、赤沢亮正経済再生相が近く訪米し、3度目の閣僚協議を行う。日本政府は相互関税だけでなく、鉄鋼・アルミ、自動車すべての上乗せ関税を対象に、米側の譲歩を引き出したい考え。米国産の日本車を逆輸入する案も浮かぶ中、7月の参院選に先立つ外交成果につなげられるかが焦点となる。

<「不退転の決意」と首相>

「期限に拘泥するあまり、国益を損なうようなことをするつもりはない。不退転の決意で臨む」――。米関税政策を巡り、石破茂首相は19日の参院予算委員会で、日本の交渉姿勢をあらためて強調した。

世界に先駆けて閣僚協議にこぎ着けた日本は、蓋をあけてみれば英国に抜かれ、強敵とされた中国にも先を越された格好だ。「日本はトップバッターだったはずだが、今や(赤沢担当相は)お尻に火がついている状態」と、首相周辺からは焦りの声もにじむ。

とはいえ、表向きは安易な妥結交渉とは距離を置き、相互関税と鉄鋼、自動車などへの追加措置の撤廃を求める姿勢は崩していない。

政府関係者3人によると、閣僚折衝に先立つ事務レベル協議では、1)対米投資、2)非関税障壁、3)経済安全保障――などの分野で交渉材料を準備。日本車メーカーが米国で生産する自動車を日本に逆輸入する案も浮かぶ。

ベセント米財務長官のほか、ラトニック米商務長官やグリア通商代表部(USTR)代表らとの日程調整を急ぎ、近く3度目となる閣僚協議に臨む。

<米赤字解消へ複数カード>

日米双方の貿易拡大に向けては、液化天然ガス(LNG)やトウモロコシ・大豆などの農産品の輸入拡大が交渉カードになるとみられる。

閣僚協議に先立ち、首相は、米国におけるLNG開発への投資や日本の輸入拡大について、日本の低いエネルギー自給率を踏まえると選択肢になり得ると説明。「自動車を勝ち取るために農業を犠牲にすることはない」とする一方、トウモロコシを原料とするバイオエタノールについては輸入拡大の余地はあるとした。

経済官庁幹部の1人は「今回の交渉のポイントはどれだけ米国に投資するか」と語る。航空機や船舶、都市間鉄道などでの交渉も視野に入れる。

一方、非関税障壁の見直しでは、自動車を輸入する際の安全基準見直しが浮上している。特例措置を拡充し、提出書類を簡素化するなどして輸入しやすくする狙いがある。

経済安全保障では、造船分野での協力が有力だ。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によると、2024年の世界シェアは中国が53%、韓国が29%、日本が13%なのに対し、米国は0.1%にとどまる。米国も造船技術に関心が高いとされ、「ディールとして魅力のある分野」(前出の経済官庁幹部)との声がある。

<協議次第で軌道修正も>

もっとも、政権内では「何が起きるか分からない」(首相周辺)との声も残り、思惑通りに交渉が進むかは不透明感が漂う。

「事務レベルでいくら協議を重ねても、互いの疑問を解消するくらいしかできない。最終的にはトランプ大統領の判断」(前出の経済官庁幹部)とされ、結論を得るまでの曲折も予想される。「交渉事に100%はあり得ない」(別の関係者)との声もあり、閣僚協議の行方次第で全面撤回の修正も視野に入りそうだ。

内政面では近く参院選を控える。「消費減税の争点化が不可避の状況で、首相は減税に消極的だ。(90日の猶予が切れる)7月上中旬までに外交成果を得る必要がある」(前出の関係者)との危機感もくすぶる。

ロイター
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