英中銀、0.25%利下げ 関税が成長・インフレに影響

イングランド銀行(英中央銀行)は8日、政策金利を0.25%ポイント引き下げ4.25%とした。中銀本部で8日撮影(2025年 ロイター/Carlos Jasso/File photo)
[ロンドン 8日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は8日、政策金利を0.25%ポイント引き下げ4.25%とした。引き下げは2会合ぶり。
金融政策委員会は5対4で0.25%の利下げを決定、ディングラ委員とテイラー委員は0.5%の利下げを主張。チーフエコノミストのピル委員とマン委員は据え置きを支持した。
中銀は米国などによる関税引き上げについて、英国の経済成長を一定程度圧迫しインフレ率を押し下げるとの見方を示したが、見通しが依然不透明であることを強調した。
ベイリー総裁は「ここ数週間で、世界経済がいかに予測不可能であるかが示された。だからこそ、さらなる利下げには段階的かつ慎重なアプローチを堅持する必要がある」と述べた。
金利の道筋をあらかじめ設定していないとし、金利見通しで「段階的かつ慎重」との文言を維持した。決定会合の議事録で、世界的な貿易摩擦の影響を「誇張すべきではない」とした。市場では年内の利下げ加速が予想されていた。
JPモルガン・プライベート・バンクのグローバル市場ストラテジスト、マシュー・ランドン氏は「メンバー2人が据え置きに投票したことは、市場によりタカ派的なメッセージを送った」と指摘。同時に「利下げの条件は引き続き整っていると考る」と述べた。
関税の影響がなければ今月の利下げは確実ではなかった。0.25%の利下げに賛成した政策委員のうち3人は、関税が発効していなければ利下げ決定は「微妙な均衡」だっただろうとしている。
英首相官邸報道官は、スターマー首相が米国との貿易交渉について8日に説明すると明らかにした。関係筋によると、貿易合意の概要を発表する見通し。
ベイリー総裁は「これを非常に歓迎している」とし、「不確実性の低減に役立つだろう」と述べた。
中銀は4月29日時点の状況に基づき、米国の関税により今後3年で英経済が0.3%縮小し、インフレ率が早期に目標に戻すのに役立つと見積もっている。
関税による英成長率への影響の約3分の2は、英国製品への直接関税よりも、関税が世界経済に与える広範な影響によるものだと中銀は指摘した。
四半期ごと経済見通しで中銀は今年のインフレ予想をこれまでの3.75%程度から引き下げ3.5%程度でピークになると見ている。ただ4月からの家庭向けエネルギー・水道料金引き上げで3月の2.6%からは上昇する。
BOEは、インフレ率が2027年第1四半期に目標の2%に戻ると見ており、これは2月の予想より9ヵ月早い。また、MPCの重要な視野である2年後のインフレ率は1.9%に低下し、前回予想の2.3%を下回ると予想している。
2024年末と25年初めの指標が堅調だったことで、今年の成長率は1%とし、2月予想0.75%から上方修正した。しかし第1・四半期の成長は不安定に見えるとしている。
26年の成長率見通しを1.5%から1.25%に引き下げたほか、短期的に四半期の基調成長率は0.1%程度にとどまるとした。
賃金の伸びは現在の約6%から年末までに3.75%へと急激に鈍化すると見込んでおり、失業率は現在の約4.8%から来年には5%に上昇すると予想している。
中銀はまた、国内の持続的インフレと労働市場の逼迫に焦点を当てた従来のシナリオに代わって新たなシナリオを採用。貿易政策をはじめとする経済政策の不確実性が高まって消費と投資を抑制、成長とインフレが押し下げられる内容に設定した。
また、生産性がさらに低下しインフレ率が0.4%ポイント上昇する賃金価格スパイラルの可能性も検討した。