ニュース速報
ビジネス

11月ロイター企業調査:「出社」望むが8割、社員の働き方 人材採用にはマイナス 

2024年11月07日(木)10時02分

 11月7日、ロイター企業調査で社員の働き方について聞いたところ、出社が望ましいとの回答が8割を超えた。写真は都内の通勤風景。2021年1月撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Miho Uranaka

[東京 7日 ロイター] - 11月のロイター企業調査で社員の働き方について聞いたところ、出社が望ましいとの回答が8割を超えた。米アマゾン・ドット・コムが週5日出社を義務付けて話題になったが、日本企業も大半がオフィスで顔を合わせてコミュニケーションを取るほうが効率的と考えていることが分かった。一方、人材採用の観点からは9割近い企業が在宅勤務など多様な選択肢を提供したほうがプラスに働くと認識していた。

調査は10月23日─11月1日に実施し、調査票発送企業は505社、回答社数は240社だった。

新型コロナウイルスの流行で多くの企業がリモートワークを取り入れたが、今回の調査では83%の企業が「従来型の出社が望ましい」と回答した。「できるだけリモートを増やすほうが望ましい」と回答した企業17%を大きく上回った。

出社が望ましいとする企業からは、「新製品開発業務のスピードを上げるためには、従来の出社体制での密なコミュニケーションが必要」(紙・パルプ)、「耳と目から入るコミュニケーションは対面のほうが有効」(食品)、「若手教育の機会が失われる」(そのほか製造)など円滑な意思疎通の必要性を指摘する声が聞かれた。

55%の企業がリモートワークでも業務効率は変わらないと回答したが、「リモート勤務の多い従業員の業務のアウトプットは明らかに低い」(輸送用機器)、「実際にリモート業務とパフォーマンスが違う」(電機)などのコメントがあった。リモート導入で効率が「下がった」と答えたのは30%、「上がった」と答えたのは16%だった。

また、製造現場で働く職員はリモートで働くことができないなど「社内での公平感に欠ける」(化学)との意見もあった。

一方で、「できるだけリモートを増やすほうが望ましい」と回答した企業からは、「リモートで処理できる業務が多々あり、事務所家賃の軽減につながる」(小売)、「都心オフィスの床面積減」(運輸)、「従業員エンゲージメント向上に寄与するなど、プラス側面の方が大きい」(化学工業)などの声が出ていた。

出社、リモートいずれかの回答を選択したものの、2つを組み合わせた柔軟な働き方の必要性を指摘するコメントも目立ち、「従来型の出社をベースとするものの、多様な働き方の1つとして定着したリモートを否定するものではない」(卸売)、「ライフワークバランスを考慮し在宅勤務を柔軟に取り入れたハイブリッドな形態が一番良いと考える」(化学)との意見が聞かれた。

働き方の柔軟性が採用に与える影響についても尋ねたところ、「影響がある」とした企業は88%に上った。「学生は柔軟な働き方を求めている」(建設)、「中途採用の会社への希望に、在宅勤務というリクエストが増えている」(卸売)、「子育て世代などは柔軟に働ける環境を求めている」(食品)などの声があった。企業は昔ながらの働き方が効率的とみているものの、人材不足が深刻化し、価値観が多様化する中でさまざまな働き方を用意する必要性に迫られている。

米国ではIT大手のアマゾンが25年1月から週5日出社を義務付け、社内で論争になっている。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は「発明、協力、つながり」に必要と説明した。グーグルやメタ、マイクロソフトは完全出社ではなく、週2─3日のオフィス勤務を求めている。

(浦中美穂 グラフィック作成:照井裕子 編集:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、対ベトナム貿易赤字に懸念 「持続不可能」と伝え

ビジネス

午前のドルは145円前半に下落、円安是正への警戒感

ビジネス

米ウォルマート、関税対応で商品値上げへ 5─7月期

ビジネス

午前の日経平均は続落、円高警戒やテクニカル面の過熱
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    宇宙から「潮の香り」がしていた...「奇妙な惑星」に生物がいる可能性【最新研究】
  • 3
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習い事、遅かった「からこそ」の優位とは?
  • 4
    戦車「爆破」の瞬間も...ロシア軍格納庫を襲うドロー…
  • 5
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食…
  • 6
    宇宙の「禁断領域」で奇跡的に生き残った「極寒惑星…
  • 7
    対中関税引き下げに騙されるな...能無しトランプの場…
  • 8
    大手ブランドが私たちを「プラスチック中毒」にした…
  • 9
    トランプに投票したことを後悔する有権者が約半数、…
  • 10
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 10
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中