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全国コアCPI、3月は+2.6% 年度内の2%割れ見込めずとの声

2024年04月19日(金)10時30分

総務省によると、3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は106.8となり、前年同月比2.6%上昇した。写真は2020年8月、都内で撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada

[東京 19日 ロイター] - 総務省が19日に発表した3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は106.8と、前年同月比2.6%上昇した。原材料価格上昇の転嫁の影響が一段と後退する中、生鮮食品除く食料の伸び率がさらに縮小し、コアCPIの伸び率は前月の2.8%を下回った。

春季労使交渉(春闘)での高い賃上げ率、円安、原油価格上昇と足元では物価押し上げ要因が相次ぐ。市場ではコアCPIの伸び率について、今年度中の2%割れは見込めなくなったとの声が出ている。

<生鮮除く食料品、7カ月連続で伸び縮小>

コアCPIの伸び率はロイターがまとめた民間予測2.6%上昇と一致した。

生鮮食品を除く食料は4.6%上昇と、前月の伸び率5.3%を下回った。7カ月連続で伸び率が縮小。

宿泊料は27.7%上昇で、こちらも前月の33.3%上昇を下回った。ただ、インバウンド需要の強さから高い伸びが継続している。日本政府観光局が17日に発表した3月の訪⽇外国人客数は308万1600人(推計)となり、単月として初めて300万人を突破した。

一方、エネルギー価格は0.6%下落と、前月の1.7%下落から下落率が縮小した。電気代は1.0%下落、都市ガス代は10.1%下落でともに前月より下落率が縮小した。政府の電気・ガス価格激変緩和対策による下押しがはく落、原燃料価格の上昇も下支え要因となった。

コア対象522品目のうち、上昇は411、下落は77、変わらずは34。

併せて発表された2023年度平均のコアCPIは前年度比2.8%上昇で、伸び率は前年度の3.0%を下回った。

生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は2.9%上昇と、22年11月以来の3%割れとなった。23年度平均は3.9%上昇で1981年度以来の高い伸び率。

<相次ぐ物価上昇要因、「早ければ7月に利上げも」>

3月はコアCPI、コアコアCPIともに伸び率が縮小したが、足元では物価の押し上げ要因が相次ぐ。

年初以来続く円安で、日銀が発表している輸入物価指数(円ベース)は2月に前年比プラス圏に浮上。3月速報では1.4%に伸び率が拡大した。総務省の担当者は「輸入物価指数の動向から国内の財価格への反映は一般的には半年程度のズレがある」と話す。

みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは、先行きコアCPIの伸び率は鈍化のペースが遅くなるとみている。酒井氏は従来、24年度は2%台前半で緩やかに鈍化し、24年度末から25年度にかけて2%を割り込むとみていたが、今では当面3%前後で高止まりとなり、24年度後半に鈍化するとしても2%台半ば程度を維持する可能性が高まっていると指摘。「24年度中の2%割れは見込めなくなった」と話す。

日銀の植田和男総裁は19日の記者会見で、円安による輸入物価の上昇が基調的な物価上昇率に影響を与える可能性に言及し、「無視できない大きさの影響が発生した場合には金融政策の変更もあり得る」と語った。

酒井氏は賃上げに伴う人件費の上昇、人手不足による物流費の上昇と相まって「円安が企業の価格転嫁意欲を高める」と指摘。24年度はコアCPIだけでなく、より基調的なコアコアCPIの上昇率も押し上げることが十分に考えられると述べた。

その上で、4月以降のサービス価格で賃金から物価への波及が確認できれば「早ければ7月の利上げもあり得る」と指摘した。ただ、個人消費の弱さが懸念要因で、春闘を受けて賃金の上昇率が高まっても、物価上昇率が高止まりすれば実質賃金のプラス転換が遅れるとみている。

    (和田崇彦)

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