「ジョン・レノン」を名乗った男 ――暗殺犯マーク・チャップマンの心に起きていたこと
Lennon’s Alter Ego
事件直後に犯人の経歴を伝えたニューズウィーク米国版1980年12月22日号のページ。左下は購入したダリのリンカーンの肖像画
<1980年12月8日、ニューヨークのダコタ・ハウス前で、元ビートルズのジョン・レノンは銃撃され、命を落とした。引き金を引いたのは、当時25歳の無名の青年だった>
孤独な人よ、君はどこから来た?
孤独な人よ、君の居場所はどこ?
「エリナー・リグビー」(レノン&マッカートニー、1966年)
マーク・デイヴィッド・チャップマンは「エリナー・リグビー」の不毛な世界から来た孤独な男で、奇妙で小さな夢を生きてきた。ジョージア州で過ごした高校生時代にはジョン・レノンに憧れていた。ハワイで管理人として働いていたときは名札にジョン・レノンと書いていた。ギターを愛し、日系の女性と結婚した。それから何かの異変が起きた。
チャップマンは仕事を辞め、出退勤簿に「ジョン・レノン」とサインした後、切り裂くような線でその名を消した。そしてレノンの最新アルバム『ダブル・ファンタジー』を小脇に抱え、レノンの自宅のあるダコタ・ハウスに向かった。自分の「分身」と決着をつけるために。
「チャップマンはこう言いたかったのだろう」と推測するのはハワイの精神鑑定医ロバート・マービット。「『おお、レノンはこの世に2人の自分がいることを知っているぞ。私が1人を消してやろう』と」
だからチャップマンは4発の銃弾で、ずっと大事に育ててきた二重人格の片割れを吹き飛ばした。






