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英中銀0.25%利上げ、インフレリスク警戒し金利高止まり予想

2023年08月04日(金)02時42分

イングランド銀行(英中央銀行)は3日、政策金利を5.00%から0.25%ポイント引き上げ、15年ぶりの高水準となる5.25%とした。ロンドンの本部、7月30日撮影。(2023年 ロイター/Hollie Adams/File Photo)

[ロンドン 3日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は3日、政策金利を5.00%から0.25%ポイント引き上げ、15年ぶりの高水準となる5.25%とした。金利が当面高止まりするとの見方を示した。

先週0.25%ポイントの利上げを決定した米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)とは異なり、英中銀は利上げ終了をほとんど示唆しなかった。

英中銀は金利の見通しについて「インフレ率を目標の2%に下げるため、必要な期間、十分制約的になるようにする」と表明。「一段と持続的なインフレ圧力の一部リスクが顕在化し始めた可能性がある」と指摘した。

ベイリー総裁は会見で、利上げ終了を宣言する時期ではないと表明。「われわれは証拠に基づいた行動をし続けなければならない。インフレがさらに持続するという証拠が得られれば、それに対応する必要がある」と述べた。その上で「再び利上げが必要になるかもしれないが、それは確実ではない」とも語った。

一方、利下げの時期について推測するのは時期尚早だとした。

金融市場は、英中銀が初めて政策スタンスを「制約的」と表現したことに注目した。依然、9月に政策金利が0.25%引き上げられ5.5%になる可能性を3分の2程度の確率で織り込んではいるものの、金利は5.75%でピークを迎えるとみて、中銀の引き締めがやや弱まるとの予想に動いた。英ポンドはほとんど値動きがなかった。

ナットウエストのアナリストは、ピーク金利予想を従来の6%から5.5%に引き下げた。

ベレンバーグのシニアエコノミスト、カラム・ピッカリング氏は「英中銀は今日、現在の引き締めサイクルで初めて、金融政策が制限的であることを認めた。さらなる利上げの可能性を残したが、これは中銀が金利のピークに近づいているというわれわれの見方を支持するものだ」と述べた。

ベイリー総裁は、賃金の上昇ペースは英中銀の前回予想を「大幅に上回っている」と言及。英中銀によると、賃金の伸びは企業の利益率よりも高インフレの大きな要因になっているという。

昨年、41年ぶりの高水準の11.1%まで上昇したインフレ率は、6月に7.9%まで下がったが、主要国の間では依然最も高い。

RSM・UKのエコノミスト、トーマス・ピュー氏は「インフレが持続可能な軌道に乗ったことに英中銀が満足するには、軟調なデータが1つ出ただけでは不十分だ。われわれは、9月に少なくともあと1回、0.25%ポイントの利上げがあると予想している」と述べた。

英中銀は「インフレは経済的ゆとりがない人々に最も打撃を与えるため、インフレを目標の2%まで確実に下げる必要がある」とした。

<3つの意見>

0.25%利上げは6対3で決定。マン、ハスケル両委員が0.5%利上げ、ディングラ委員は再び据え置きを主張し、今年初めて意見が3つに分かれた。

市場では5.5%への大幅利上げの確率は約3分の1程度とみられていた。

経済予測では、インフレ率について今年末までに4.9%に低下すると予想。5月時点より急速な低下を見込んだ。

これは、インフレ率半減の目標を掲げるスナク政権にとって安心材料になるとみられる。

ハント財務相は英中銀の発表後、「計画通りに行けば、1年後にはインフレ率が3%を下回り、景気後退に陥ることはないだろう」と述べた。

ただ来年終盤以降、インフレ低下ペースは鈍るとし、目標の2%に到達するのは25年第2・四半期以降と5月時点の予想より3カ月後ずれさせた。

成長率については、今年を0.5%と5月時点の0.25%から引き上げる一方、24年は0.75%から0.5%に、25年は0.75%から0.25%に下方修正した。

直近が4.0%だった失業率は25年終盤までに4.8%に上昇すると予想。5月時点の4.4%から引き上げた。

今年末の賃金上昇率は6%と予想。5月時点の5%から引き上げられた。中銀は「インフレ圧力がより持続的になるリスクの一部が顕在化し始めた可能性がある」と述べた。

一方、今年の住宅投資は5.75%減、24年は6.25%減と予測した。

ロイター
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