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日産全6工場で国内向け出荷停止、国の指摘後も無資格者検査

2017年10月19日(木)23時55分

 10月19日、日産自動車、全6工場で生産している国内市場向け全車両の完成検査、出荷、登録の停止を決めた。写真はロゴ、都内で2月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[横浜市 19日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>は19日、無資格者が完成車の安全性などを出荷前に最終確認する「完成検査」に従事していた問題で、国から指摘を受けて再発防止策を講じた後も、複数の工場で無資格者が一部の検査を続けていた、などと発表した。

同社は全6工場で生産している国内市場向け全車両の完成検査・出荷・登録の停止を決めた。

日産は9月18日に国土交通省による立ち入り検査で不正を指摘され、同月20日までに対策を講じた。西川廣人社長は今月2日の謝罪会見で、不正発覚を受けた対策として、有資格者が完成検査を実施する体制に是正したと説明していたが、実際は現場で対策が徹底されていなかった。

無資格者による検査が一部続いていたのは、追浜工場(神奈川県横須賀市)と栃木工場(栃木県上三川町)、日産車体<7222.T>の湘南工場(神奈川県平塚市)、日産自動車九州(福岡県苅田町)。さらに同4工場では、本来、国交省へ事前に届け出たラインで実施しなければならない完成検査の一部の項目が、届け出とは違う場所で行われていた。弁護士など第三者を中心とするチームや社内の調査で発覚した。

新たな検査不正の対象は、新型「リーフ」や「エクストレイル」など約3万4000台(2017年9月20日ー10月18日製造)に上る見込みで、このうち登録済みの約4000台をリコール(回収・無償修理)する予定。対象車両の再検査やリコールに伴う費用は「10億弱と限定的」(西川社長)という。

日産は今後、最低2週間かけ対策を徹底し、万全な検査体制を構築、その後、国交省の監査を経て国内出荷を再開させる、としている。西川社長は同日夜、本社での記者会見で、「対策を信用して買っていただいたお客様の信頼を裏切ってしまった。(再開は)非常に慎重にしたい」と語った。

問題発覚後も不正が続いた理由について、同社長は「過去からずっと続けてきたことをいきなりダメと言われても改められなかった」などと、長年の習慣を即座に修正する難しさを指摘する一方、自身の経営責任については「再発防止を徹底して正常な生産に戻す。顧客の信頼を回復し、会社を成長軌道に戻すことが責任」と述べた。

前回の会見で否定した人手不足の影響については、「単純に人手不足うんぬんではない」とし、「ラインのスピードを厳守することが目的ではない。スピードを落としても構わない」と現場には伝えている、と釈明。「完成検査員を育てる仕組みが20年以上変わっておらず、現状にあったアップデートが必要だ」と話し、検査要員が足らなければ追加配置する意向を示した。

*内容を追加して再送します。

(白木真紀)

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