ニュース速報

ビジネス

ドル調達コストは高止まり、金融不安定化回避が責務=中曽日銀副総裁

2017年01月20日(金)15時52分

 1月20日、日銀の中曽宏副総裁は、日米の金融政策の方向性が分岐した場合、ドル調達コストが容易に急上昇する可能性があると警告した。写真は2015年9月ロイターとのインタビューに答える中曽氏。日銀本店で撮影(2017年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 20日 ロイター] - 日銀の中曽宏副総裁は20日、都内で講演し、米国と日欧の金融政策の方向性の違いが、金融機関の行動を通して国際金融システムの不安定化を招かないようにすることも中銀の責務と語った。邦銀のドル調達コストは高止まっているが特段の問題は生じていないとし、外貨の資金繰りを注視していく姿勢を示した。

中曽副総裁は、国際金融システムの安定性の評価には、世界的にもドル建て与信のシェアが大きい米系以外の金融機関によるドル資金の調達環境を注意深くみていくことが重要との認識を示した。

近年、為替スワップ市場における非米系銀行のドル調達プレミアムが拡大しているが、その背景には、利上げを進める米国と金融緩和を推進している日欧の金融政策の方向性の違いや、国際金融取引を行う銀行に対する規制強化などが影響していると指摘。

金融政策の方向性の違いが「日欧の金融機関のドル建て金融資産への投資を促し、このことが為替スワップ市場の需給ひっ迫の一因になっている」との見方を示した。

米国の利上げによって「新興国市場から急速かつ大規模な資本流出を誘発する場合には、資金仲介の順循環性をさらに増幅させる可能性も考えられる」と注意も促した。

そのうえで、金融政策の方向性の違いが金融機関の行動を通じて「国際金融システムの不安定化を招くことがないようにするのも中央銀行の責務」と強調。日本の金融システムは安定性を維持しているものの、日銀として「今後も金融機関に対してリスク顕現化を防止する強い財務基盤と経営管理の確保を促していく」と語った。

ドル調達コストの上昇が邦銀に与える影響について中曽副総裁は、講演終了後に記者団に対して「外貨調達プレミアムは高止まっているが、特段の問題は生じていない」と言明。

もっとも、先行き不透明感の高い状況が続いているとし、「引き続き邦銀の外貨資金繰りの状況を注視する」と述べた。

*内容を追加します。

(伊藤純夫)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

習中国主席、フランス・セルビア・ハンガリー訪問 5

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG

ワールド

米上院議員、イスラエルの国際法順守「疑問」

ワールド

フィリピン、南シナ海巡る合意否定 「中国のプロパガ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中