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焦点:モンテ・パスキ再建に早くも黄信号、前途多難の資本増強
7月31日、イタリア銀行大手モンテ・パスキ再建計画の2つの柱である大規模な増資と不良債権売却の先行きに、早くも黄信号が灯っている。写真は同行の支店。パリで3月撮影(2016年 ロイター/Mal Langsdon)
[ミラノ 31日 ロイター] - イタリア銀行大手モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)
特に再建計画成功の鍵は総額50億ユーロに上る増資を年内に完了できるかどうかが握っているが、時価総額が10億ユーロ弱で、2014年以降に80億ユーロもの資金を新株発行で調達し、すぐに使い果たしたモンテ・パスキにとっては無理難題とも言える。
国際的な投資銀行が新株引き受けに仮合意しているとはいえ、その前提条件は大規模な証券化を通じた92億ユーロの不良債権売却が成功することだ。ただ、これほどの規模の証券化はイタリアでは過去に例がない。
何人かの銀行関係者やファンドマネジャーは既に、この計画がうまくいくかどうか疑問を投げかけている。
資産運用会社ハーミーズ・インベストメンツのクレジットアナリスト、フィリッポ・アロアッティ氏は「計画の2本柱にはともに崩れやすい要素がある。モンテ・パスキの過去の増資実績を踏まえれば、このような大掛かりな増資を完了するのは難しいだろう。また不良債権の証券化もとてつもない作業だ。実行に伴うリスクは著しく大きい」と述べた。
<逆風の市場環境>
JPモルガン
だが少なくとも3行、インテーザ・サンパオロ
さらに引受団に入った銀行も、売れ残った新株を保有するという最終的な約束をしたわけではない。
モンテ・パスキの増資については株式ブローカー、エクイティアが調査ノートで、今の不安定な市場において必要としている全額を調達するのは「ほぼ無理」と予想した。
イタリアの銀行が抱える不良債権額は3600億ユーロと、ユーロ圏全体の3分の1を超える。これが重しになり、イタリア銀行株は今年になって下落している。その上にウニクレディトが近く数十億ユーロの増資に踏み切る見通しで、モンテ・パスキが当てにしている投資家がそちらに流れる可能性がある。
またレンツィ首相が進退をかけている上院の権限縮小を盛り込んだ憲法改正の是非を問う国民投票が否決されれば、イタリア市場への見方が一段と悲観的になりかねない。
<転換点はまだ先>
モンテ・パスキの不良債権証券化は、シニア債となる60億ユーロに政府保証が付与される予定で、メザニン債16億ユーロは民間出資の銀行救済基金「アトランテ」が買い取る。残りの最もリスクが大きいジュニア債は既存株主に売られる。
ただしシニア債が、政府保証確保に必要な投資適格級格付けをすべて得られるかはっきりしていない。事情に詳しい関係者は、ブレグジット(英の欧州連合離脱)問題で経済の先行き不透明感が漂う中で、裏付け債権の価値を格付け会社が評価する必要があるため、結論が出るまでには1年はかかるだろうと話した。
LCマクロのチーフエコノミスト、ロレンツォ・コドーニョ氏は「60億ユーロのシニア債の一部は投資適格級とならず、売却が困難になる」と予想した。
コドーニョ氏によると、イタリアの銀行問題は解決に向けた道のりを歩み続けているものの、本格的に事態が好転する地点にはまだ達していないという。
(Silvia Aloisi、Valentina Za記者)