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日銀追加緩和見送り、新興国減速の影響注視

2015年10月07日(水)19時54分

 10月7日、日銀は金融政策決定会合で、当面の金融政策の「現状維持」を賛成多数で決めた。日銀本店、6月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 7日 ロイター] - 日銀は6─7日に開いた金融政策決定会合で、年間80兆円の国債買い入れを柱とする現行の金融緩和の継続を決定した。新興国経済の減速で輸出や生産が悪化しており、市場の一部では追加緩和期待もくすぶっていたが、黒田東彦総裁は「デフレ状況ではない」「物価の基調は着実に高まっている」などと説明した。もっとも今後は必要ならば追加緩和を辞さない姿勢も繰り返し、市場の緩和期待をつなぎとめた格好だ。

 <市場に電撃緩和期待>

日銀が政策運営の目安とする消費者物価指数で、生鮮食品を除くコアCPIは8月前年比0.1%のマイナスに転落、日銀が掲げる2016年度前半の2%の目標達成は難しい情勢だ。しかも日銀が従来政策判断で重視してきた鉱工業生産が8月は前月比1.2%と大幅に低下し、輸出・生産の悪化で景気が下振れ、物価を押し上げる力そのものが弱くなる可能性から、市場では電撃的な追加緩和の可能性もささやかれていた。

しかし黒田総裁は会見で、「物価の基調は着実に高まっている」と説明。生鮮・エネルギーを除く新コアコアCPIが8月は前年比1.1%まで上昇したほか、日用品などの価格上昇が続いている点を指摘した。

 <人手不足による物価上昇を強調>

8月の鉱工業生産が前月比で1.2%と大幅に下落し、7-9月も2四半期連続で前期比マイナスとなる可能性が懸念されているが、総裁は「鉱工業生産は重要だが、それがGDPの大半を決める状況ではない」と説明。「需給バランスは労働面を中心に改善傾向」とし、人手不足による労働需給のひっ迫が、物価を押し上げていくとの見方を強調した。

安倍晋三首相が9月24日に「デフレ脱却は目の前」と発言し、更なる円安を懸念する政府と日銀の間でデフレ脱却に向けた姿勢にそごが生じているとの見方が市場でささやかれているが、総裁は「政府との共同声明で記された2%の目標を早期に達成する方針に変わりはない」と強調。必要とあらばちゅうちょなく政策調整行うことは変わらない」と繰り返した。「2%達成は道半ばだが、過去2年半でデフレ状況は変わった」とも付け加えた。

 <市場に一定の見方なし>

また「新興国減速の影響で輸出や生産が横ばい状態であるのは事実」とし、「そうしたことも踏まえつつ(経済)全体を見ていく必要がある」とし、輸出・生産の停滞を注視している姿勢をうかがわせた。

会見を踏まえ市場では、「10月に追加緩和をやらなければならない必要性は低い。会見では可能性を匂わせるメッセージも基本的にはなかった」(三菱東京UFJ銀行 市場企画部 チーフアナリスト 内田稔氏)との指摘や「追加緩和を否定もしていない」(大手証券)との見方が出ていた。

*内容を追加します。

(竹本能文 編集:宮崎大)

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