コラム

高市早苗氏の政策・世界観を分析する──「保守」か「右翼」か

2021年09月10日(金)11時59分

保守界隈において支持された主流な経済政策は、特に第二次安倍政権が発足した当初、PB規律を大凍結して財政出動を極めて重視する一派と、PB規律は暫時的に凍結する方向ではあるが、最も重要であるのは大規模な金融緩和である、とした所謂リフレ派に大別された。前者の筆頭は従前から「国土強靭化」を謳い、公共事業の大幅増などを眼目とした京都大学大学院教授の藤井聡氏などのグループ(これは、藤井氏が編集長を務める雑誌『表現者クライテリオン』から冠して表現者グループ、等と呼ばれる)。後者の筆頭は、大規模な金融緩和論者すなわちリフレ派として知られた経済評論家の上念司氏などのグループである。

この両者は、PB規律については全部凍結、漸次凍結などの小異はあったものの、所謂小泉・竹中・安倍構造改革路線への評価については180度違う(前者は否定、後者は肯定)ので対立した。2020年の米大統領選挙を巡り保守界隈で更に対立が深まると、リフレ派論客らが内部政治的に敗北する結果となり、前述「表現者グループ」の経済観が寡占的になった。

高市氏の経済政策を読むと、根本的には藤井氏を筆頭とする「表現者グループ」の積極財政論を全面的に首肯している一方で、リフレ派の金科玉条とする金融緩和についても継続する内容となっており、「表現者グループ」と「リフレ派」の中間的政策になっている。ちなみにサナエノミクスという名称については、前述した『文藝春秋』の中で高市氏は『サナエノミクスと称すると少し間抜けな響きで残念だが』と自虐的に記述している。

3.靖国神社、歴史認識

保守界隈が最も重視するのはこの項目であろう。高市氏は自民党入党後、ほぼ一貫して靖国神社参拝を行ってきた。これが保守界隈で「ポスト稲田」の最有力女性候補として高市氏が急浮上した大きな原因の一つである。報道によれば、高市氏は仮に総理に就任した後も靖国参拝を続ける意向と明言(朝日新聞,2021年9月8日)。

靖国神社への総理の参拝は、第二次安倍政権下では内閣発足後約1年を経過した2013年の一度きり(当時、小泉総理以来約7年ぶり)であった。しかし高市氏の靖国への熱意は硬く、保守界隈にとってはこれが「保守であるか否か」の正邪を問う格好のリトマス試験紙になった。すでに高市氏は第二次安倍内閣における入閣時に、閣僚として参拝しており、これが影響もあってか保守界隈からの高市支持は揺るがない。また『Hanada』の記述では、「首相や閣僚の靖国参拝は外交問題ではない」と披瀝している。現実的には外交問題になっている事実をどう解釈しているのかはともかく、「靖国参拝は外交問題ではなく国内問題だ」として公人参拝に賛成するのは保守界隈にあっては「通常運転」である。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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