コラム

W杯招致へカタールの無謀な挑戦

2010年12月02日(木)16時09分

勝つ気満々 元フランス代表のジダン(左)をW杯招致大使に任命したカタール(9月16日)Reuters

 米政府はもとより世界各国の政府関係者も今はウィキリークスの機密暴露問題でてんてこ舞いだろうが、スポーツ界は息を呑んで来るべきビッグイベントを待ち構えている。2日に行われる国際サッカー連盟(FIFA)理事会の投票で、W杯2018、22年両大会の開催地が決定するのだ(どれだけ重大事かを示す指標の一つとして、W杯は今年のヤフー検索語ランキングで原油流出に次ぐ2位に入った)。

 22年大会に立候補しているオーストラリア、日本、カタール、韓国、アメリカの5カ国は今日、FIFAで最後の招致演説を行った。

 18年大会の開催地は欧州に決まっているので、面白いのは22年大会のほうだ。サッカー関連ブログの下馬評では、最後まで残るのはアメリカと、驚くなかれカタールだろうという。ペルシャ湾の小さな首長国カタールが、中東に初のW杯を招致しようという無謀とも思える挑戦は、アラブ世界の無数のファンに夢を与えてきた。

■屋外冷房機を備えたスタジアム

 だがカタールにとって不幸なことに、FIFAは同国の大会施設を「高リスク」と評価している。まだほとんどできてもいないからだ。大会が開かれる6〜7月の酷暑も問題だ。これらの障害を克服するために、カタールは誘致に数十億ドルを注ぎ込み、最新鋭の屋外冷房機を備えたスタジアムを建設すること、そして使用後はそれを発展途上国に寄付すると約束した。

 首都ドーハは、招致を宣伝する「22」「驚異を期待せよ」などの横断幕で飾り立てられ、ショッピングモールの専用ブースでは22年大会のバンパーステッカーなどが配布されている。期待は最高潮だ。

 カタールは驚くほど健闘したし、もし招致に成功すれば中東にとっては大いに刺激的な勝利となるだろう。だが、アメリカがカタールに負けるとはとても思えない。FIFAの目標はつまるところ、金儲け。その点、カタールはアメリカ巨大市場の敵ではない。だが結果は最後までわからない。最後に決断するのは、事務方ではなく政治家だからだ。

──ブレイク・ハウンシェル
[米国東部時間2010年12月1日(水)11時16分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 2/12/2010. © 2010 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米印首脳が電話会談、関税導入後3回目 二国間関係な

ワールド

トルコ中銀が150bp利下げ、政策金利38% イン

ワールド

ウクライナ、米国に和平案の改訂版提示 領土問題の協

ビジネス

米新規失業保険申請、約4年半ぶり大幅増 季調要因の
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 4
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 5
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 6
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 7
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 8
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story