コラム

入植再開を機にパレスチナ和解?

2010年09月28日(火)16時12分

 イスラエルがパレスチナ自治区ヨルダン川西岸へのユダヤ人入植活動の凍結を延長しなかったことに対し、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの最高幹部ハレド・メシャルは27日、最善の対応はハマスと対立するパレスチナ組織ファタハと和解することだと述べた。

 独DPA通信は次のように報じた。


 メシャルは、パレスチナ人同士で和解すれば交渉力が高まるとしたうえで、和解が国家的に必要であり、「シオニスト(イスラエル人)の強硬姿勢に対する最善の対応だ」と述べた。


 メシャルの主張には一理ある。パレスチナ人の半分しか代表せず、ガザ地区が存在しないかのように行動する指導部では、パレスチナの「最終的地位」をめぐるイスラエルとの交渉に限界がある。

 一方でイスラエルは、ハマスを含むパレスチナ連合と交渉する気はないだろう。メシャルが27日、ハマスは「不法な入植者を殺し続ける」と語ったことも、マイナス要因になる。ファタハとハマスの和解がイスラエルとパレスチナの和平交渉にどんな影響を与えるのかは、間もなく見えてくるだろう。

 その前にパレスチナ人には朗報が届くかもしれない。ハマスの広報担当者はクウェートの新聞に対し、「われわれは近くエジプトにおいて、パレスチナの国家的和解を祝うことになる」と語った。

 もちろん、以前にも同じような話があった。08年、ハマスとファタハはイエメンの仲介で和解に合意し、近く協議を始めると公言。ところが合意から1日もたたないうちに双方が心変わりした。09年9月、両者は再び合意に近付いたが、結局実現しなかった。今年1月、メシャルは訪問先のサウジアラビアで、「われわれは和解実現に大きく前進した。いま最終段階にいる」と報道陣に語った。

 今度こそ実現するのだろうか。これまでは合意に至る直前で決裂することが多く、今回もどうなるかは分からない。もしファタハとハマスが合意すれば、中東和平交渉の行方を左右することは間違いない。パレスチナ側の交渉者が正統性を高める一方、イスラエルは抵抗を強めるだろう。
 
──マックス・ストラッサー
[米国東部時間2010年09月27日(月)17時37分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 28/9/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米マイクロソフト、英国への大規模投資発表 AIなど

ワールド

オラクルやシルバーレイク含む企業連合、TikTok

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4年ぶり安値 FOM

ワールド

イスラエル、ガザ市に地上侵攻 国防相「ガザは燃えて
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    出来栄えの軍配は? 確執噂のベッカム父子、SNSでの…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story