コラム

拉致犯をツイッターで出し抜いた男

2010年09月10日(金)16時22分

 アフガニスタンで監禁されていた日本人ジャーナリストの常岡浩介は、思いもよらない手段を使って誘拐犯の目を欺き、自身の状況を外部に伝えていた。ツイッターだ。

 犯人グループは9月3日、購入したばかりのノキア製の携帯電話の使い方を常岡に聞いてきたという。彼は電源を入れ、インターネットへのアクセスの仕方を教えた。そして中東の衛星テレビ局アルジャジーラのホームページを見せた後、行動を起こした。


 そのとき彼らに、ツイッターと呼ばれるサービスがあることを教えた。すると、どんなものか見せろと言うので、彼らの目の前の携帯電話を使ってツイート(つぶやき)を書き込んだ。誰も英語が分からなかったから、問題はなかった。

 そのときの常岡の書き込みは2通。1通目は「まだ生きているが、牢の中にいる」。そして2通目は「ここは(アフガニスタン北部の)クンドゥズ州アルチにある、ラティブ司令官の監獄だ」というものだった。翌日の9月4日、彼は解放された。もっとも彼自身は、身代金の受け渡しに失敗したため解放されたと考えている。

 常岡は監禁中、食事も1日3回与えられるなど丁重に扱われたらしい。しかし犯人グループは「極端に教育レベルが低かった」とし、「イスラムの教えに関する知識すら非常に乏しかった」という。

 常岡は、犯人たちは武装勢力ヒズビ・イスラミの指導者グルブディン・ヘクマティアルに忠誠を誓う兵士たちだと主張。アフガニスタン政府や一部メディアが報じたタリバン犯人説を否定した。

 ヘクマティアルは、旧ソ連軍が1980年代にアフガニスタンへ侵攻した際に戦場で名を上げたゲリラ組織、ムジャヘディンの元司令官。ヒズビ・イスラミはアフガニスタンで2番目に大きいといわれる武装勢力だ。

----アンドルー・スウィフト

[米国東部時間2010年09月08日(水)15時52分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 10/9/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英総合PMI、12月速報は52.1に上昇 予算案で

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story