コラム

オバマが希望した取材で中国編集長降格

2009年12月15日(火)15時21分

 中国で最も独立性の高い新聞の一つとされる南方週末の総編集長が、訪中したバラク・オバマ米大統領を単独取材したことで罰を受けた


 11月中旬に中国を訪問していたオバマをインタビューした週刊紙、南方週末の向熹(シアン・シー)総編集長は今週、新任の総編集長の下で働く執行編集長に降格された。中国共産党中央宣伝部の圧力があったと、同紙の3人の従業員は言う。

 いずれの従業員も報復を恐れて匿名を希望した。降格人事については中国語サイトでも論争の的になっている。

 オバマ政権側は訪中前から、より多くの市民と直接対話したいと希望していた。向の降格は、検閲や情報公開に関する米中の考え方の溝の深さを改めて浮き彫りにした。

「中央宣伝部は間違いなくインタビューを不快に思っていた」と、北京で検閲を監視する中国人ブロガー、安替(アン・ティー)は言う。


■中国外交部は了承したのに

 社会問題や汚職に関する調査報道で知られる南方週末とのインタビューは、ホワイトハウス側から名指しで要請したものだった。中国外交部はこれを了承したが、中央宣伝部は認めていなかったようで、南方週末にインタビュー記事の大半を削除させ、その結果同紙の一面には大きな余白ができた。

 私の知る限り、オバマのどんな言葉が検閲当局をそれほど激怒させたのか、報道はまだ伝えていない。

 北京で中国の大学生との対話集会に出席したオバマは、「私は情報の透明性を重んじる」と言った。だが皮肉なことに、この集会自体もある意味で「検閲済み」だった。ホワイトハウスは集会の全国中継を希望したが、中国当局は許可しなかった。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年12月14日(月)12時41分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 15/12/2009. ©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:中国の再利用型無人宇宙船、軍事転用に警戒

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story