コラム

国務省もイラン情報はトゥイッター頼り

2009年06月17日(水)05時54分

 多くの媒体が報じているように、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のトゥイッターはイランから発信されるニュースを知るための生命線になっている。

 ブロガーたちは、トゥイッターのテキストと携帯電話で撮影した画像の粗い映像を組み合わせ、貴重なライブ中継を提供してきた。いい例が、ニューヨーカー誌のライター、ジョージ・パッカーが「今のイランを知る一番の情報源」と評したアンドリュー・サリバンだろう。

 情報源としてのトゥイッターの重要性は、トゥイッター社がネットワークアップグレードのためアメリカ東部標準時の月曜夜(イランの火曜昼)にサービスを一時停止すると発表したとき改めて明らかになった。アメリカの国務省が、アップグレードを遅らせるよう要請したのだ。


 イラン政府は大統領選後、デモなどの取材を禁じているので、アメリカ政府はイラン人が情報発信できるようトゥイッターのメンテナンス予定を遅らせるようトゥイッター社に要請したと、米国務省関係者は16日に語った。国務省がサービス停止の延期を依頼したのは、「通信手段としてのトゥイッターが今のイランでいかに重要かを同社に対し印象づけるためだった」という。

 この国務省関係者が匿名を条件に記者たちに語ったところでは、イラン政府は他のウェブサイトや携帯電話、新聞等を規制しているため、トゥイッターがますます重要になっている言う。


 トゥイッターも結局は火曜夕方(イランの水曜深夜)までアップグレードを延期した。これはアメリカの内政干渉の例だと言う人もいるかもしれない。だが、情報を伝えるべきCNNが皮肉にも指摘したように、トゥイッターは他の人ばかりでなく国務省にとっても重要な情報源なのだ。


 アメリカとイランは国交を断絶しており大使館もないので、米政府は報道と国務省が各国大使館に設置している「イラン・ウォッチ室」に情報を依存している。最も大きいオフィスは、イランからの移民が多いドバイ、ベルリン、ロンドンにある。

 だがインターネット、とりわけトゥイッターやフェースブックのようなSNSは、イランが報道規制を強化した今、きわめて重要な情報源になっていると、ある政府関係者は言う。

 米政府がイラン人と直接接触しているのかどうかについて明かす政府関係者はいなかったが、ある高官は、イラン当局の尋問対象になったイラン人数人についての情報をトゥイッターで知ったと語る。

「技術がいかに助けになっているかの好例だ」と、この高官は言う。


──ジェームズ・ダウニー


Reprinted with permission from FP Passport, 17/6/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story