コラム

そりゃ怖いですけど、ひとまず行ってきます

2014年06月11日(水)15時48分

 4年前の南アフリカ大会の直前の雰囲気を覚えているでしょうか。あのときもメディアでは、「南アフリカは危ない」とさんざん言われていました。でも僕は当時、これは大げさに言われすぎているなと感じることができました。南アフリカで過ごした35日間のことは、4年前にこのサイトでブログに書きましたが、自分の勘が正しかったことをある程度まで証明できたと思っています。

 でも今回は違います。正直言ってまだ怖い。まわりの人たちも「なんだか前の大会よりヤバそうですね。気をつけて楽しんできてください」などという微妙な言葉で送り出してくれます。メディアのメッセージは広く、確実に伝わっているようです。

 そんなふうに始まったブログのタイトルが、なぜ「『退屈』日記」なのかと思う方もいるでしょう。この部分は前回大会のときのものを引き継ぎました。書いていくことはまったく別だとしても、視点は変わらないからです。ワールドカップにはエキサイティングな瞬間がたくさんありますが、退屈なこともあります。ものごとの本質を見るうえで、退屈な部分はばかにできません。前回大会から始まった「開催国は治安が悪い」というメディアの大合唱も、すでに退屈な儀式になってきたようにも思えるのです。

 そんなわけで、「ブラジルは危ない」の大合唱に負けてワールドカップ行きをあきらめるのは悔しいので、ようやく腹を決めました。今回もとりあえず行ってきます。

 もちろん、「取られるための財布」は用意しました。

プロフィール

森田浩之

ジャーナリスト、編集者。Newsweek日本版副編集長などを経て、フリーランスに。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)メディア学修士。立教大学兼任講師(メディア・スタディーズ)。著書に『メディアスポーツ解体』『スポーツニュースは恐い』、訳書にサイモン・クーパーほか『「ジャパン」はなぜ負けるのか─経済学が解明するサッカーの不条理』、コリン・ジョイス『LONDON CALLING』など。

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