コラム

大統領候補をネットで選出?

2011年12月21日(水)12時48分

 来年2012年は、アメリカ大統領選挙の年。民主党は現職のオバマ大統領の立候補で決まりですが、対する共和党は、8月の党大会に向けて、候補者選びを実施します。開始は、1月3日のアイオワ州での党員集会から。

 候補者選びには2種類あります。党員が投票する予備選挙と、党員たちが学校の体育館などに集まって、自分たちの地区からはどの候補を支持する代議員を選出するかを決める党員集会。アイオワ州は、全米で最も早く党員集会を開催することになっているため、新年早々から始まるのです。

 オバマ大統領があまりに不人気なので、共和党がまともな候補者を立てれば楽勝とも言われていますが、そもそも共和党は「まともな候補者」が見つからないので、困っています。

 結局は、地味なロムニー候補が消去法で選ばれそうな気配ですが、そこに立ちはだかったのがギングリッジ。なんだか懐かしい人物です。クリントン大統領とやり合っていた頃の有力政治家ですから、「過去の人」のイメージがあります。

 現職も対抗馬も魅力がないというのは、なんだか日本のようでもありますが、アメリカでは、民主党でも共和党でもない候補者をインターネットで選ぼうという運動が活発化しているとか。本誌日本版12月21日号は、「2012大統領選2大政党をぶっ飛ばせ!」とのタイトルの記事を掲載しています。

 去年設立されたNPOの「アメリカンズエレクト」(AE)がネットの投票で候補者を選ぶというのです。

 アメリカ大統領選の場合、50州すべてで大統領候補の登録をしなければならず、そのためには全米で300万人もの推薦署名が必要ですが、すでに200万人は集まっているとか。AEの候補者が決まったら、この署名が、その候補者を支持する署名として使われます。

 この記事によると、AEとしては、共和党のハンツマンに立候補してもらいたいのだとか。

 既成政党への不満が高まり、新鮮な人物の登場を期待する。日本でも大阪の橋下・大阪市長が誕生するところなど、日米ともに共通の気分が充満しているのかも知れません。

 これだけネットが普及し、人々がネットで意見を戦わせる時代。ネットから生まれた候補が大統領に当選する日も近いかも知れません。

プロフィール

池上彰

ジャーナリスト、東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。32年間、報道記者として活躍する。94年から11年間放送された『週刊こどもニュース』のお父さん役で人気に。『14歳からの世界金融危機。』(マガジンハウス)、『そうだったのか!現代史』(集英社)など著書多数。

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