コラム

前倒し帰還も「素晴らしい決心」「心残りはない」 油井亀美也宇宙飛行士が語った、2度目の宇宙滞在と今後の活動

2026年02月06日(金)17時35分

今回のISS滞在では、科学実験や機器の維持管理に加えて「油井さんが宇宙から撮影した画像や動画を地上の研究者が分析する」という特別なコラボが計画されていました。これは、油井さんは「写真や動画の撮影が得意」というだけでなく、人一倍「宇宙から地球の人々の生活を守りたい」という気持ちが強いことから実現したと感じます。

また、帰還する油井さんへのプレゼントのように、ISSを離れる直前には美しいオーロラを撮影する機会に恵まれました。


「突然、(滞在が)短くなるという連絡が来て、『(宇宙からの)景色を皆さんにお見せすることもできなくなるんだな』と思っていたところ、偶然、太陽の活動が活発になって、美しい景色が現れました。神様からの贈り物だと思いながら、『きっと地上の方々が喜んでくれるだろうな、パワーを受け取ってくれるだろうな』と撮影しました」

「HTV-X初号機のキャプチャー」は大西さんも称賛

油井さんにとって、2度目の宇宙滞在のミッションのテーマは「恩返し」。「10年前の(1度目の宇宙)ミッションの恩返しがしたい」ということで、多くの人のリクエストに耳を傾け、できるだけたくさんの仕事をするため、最初から全速力で駆け抜けました。

なかでも特に印象に残ったミッションとして挙げたのは「HTV-X初号機のキャプチャー(把持)」です。

昨年10月26日に種子島からH3ロケット7号機で打ち上げられた新型宇宙ステーション補給機材HTV-Xは、従来の補給機「こうのとり」と比べて、貨物の搭載能力や運用性が向上しただけでなく、宇宙に行く機会を活用して輸送後に技術実証実験も行えるなどの「二刀流」部分も注目されるなど、日本の宇宙開発における切り札的な存在です。

同月30日未明に、油井さんはISSからロボットアームを操作して素早く、優しくキャッチに成功。JAXAのライブ配信で実況中継していた大西卓哉宇宙飛行士は、「非常に安定したスピードで、非常に安定したポジで、さすが」とたたえました。

「自分でもこれがミッションでのハイライトだと思って、一生懸命やろうと思って(宇宙に)上がっていきました。無事にやり切ることができたことは大きかったです」

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、インフレ下振れリスク懸念 ユーロ高を警戒

ワールド

仏外務省、ラング元文化相を8日に呼び出し エプスタ

ワールド

米、新START失効受け新たな軍備管理合意呼びかけ

ビジネス

国連の世界食料価格、5カ月連続下落 需要増でコメは
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 5
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 8
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 9
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story