コラム

学習時間より成績に影響... コロナ禍で「勉強のやり方」が分からない子どもが7割に?

2023年04月18日(火)12時30分
勉強に集中できない男の子

コロナ禍を経て小学生から高校生まで学習意欲が低下している(写真はイメージです) TATSUSHI TAKADA-iStock

<「子どもの生活と学びに関する親子調査」の内容から、コロナ禍が子どもの学習状況に及ぼした影響、成績優秀者の勉強法を読み解く。自分に合った勉強法を見つけることの重要性とは>

東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が11日に公表した「子どもの生活と学びに関する親子調査 2022」によると、小4から高3を対象としたアンケート調査で「上手な勉強のしかたがわからない」と答えた割合は19年以降4年連続で増加し、22年は7割近くになりました。

一方、すべての学年で「学習方法の理解が進むと学習意欲も高まる傾向」が見られ、成績との関連の強さは①学習方法の理解の高さ、②学習意欲、③学習時間の順になりました。つまり、「学習時間」をやみくもに長くするよりも、自分に合った「学習方法」を身に付けるほうが成績向上につながるということです。

この調査では、毎年同じ子どもと保護者に質問して継続的に子どもの成長や保護者の意識の変化を記録しています。学習方法の理解の大切さや、コロナ禍の子どもの学習状況への影響について、調査内容から読み解いてみましょう。

環境変化の影響はとりわけ小学生で顕著に

「子どもの生活と学びに関する親子調査」は16年以降、毎年7月から9月に約2万組の小1から高3の親子に対して行っています。成績や学習意識に関する質問は、小4以上の子どもに質問紙やインターネットを通じて尋ね、毎年約1万人の回答を得ています。

特に19年からの4年間を比較すると、「勉強しようとする気持ちがわかない」「上手な勉強のしかたがわからない」と答えた割合(4段階評価で「とてもあてはまる」「まああてはまる」を選んだもの)は、小4~小6、中学生、高校生のいずれも4年連続で上昇していました。

「勉強しようとする気持ちがわかない」児童・生徒の割合を19年と22年で比較すると33.7%→53.7%(小4~小6)、48.5%→62.1%(中学生)、55.4%→64.9%(高校生)でした。「上手な学習方法がわからない」と答えた割合は、42.6%→61.1%(小4~小6)、60.0%→68.2%(中学生)、68.7%→73.2%(高校生)でした。

どちらも学年が下がるほど増加の幅が大きく、特に小学生で急増しました。調査に関わった研究者らは、コロナ禍により①スマホやゲームの時間が増えて学習意欲が低下した、②体験学習が減り試行錯誤や挑戦が少なくなったため学習方法が身に付きにくくなった、などの理由を考察し、特に小学生に環境変化の影響が顕著に現れたのではないかと分析しています。

一方、「上手な勉強のしかたがわからない」に「とてもあてはまる」「まああてはまる」と回答した「学習方法・不明群」に比べて、「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」と回答した「学習方法・理解群」は、採用している学習方略がバラエティに富んでいることも分かりました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責

ビジネス

訂正-メルセデス、中国パートナーとの提携に投資継続

ビジネス

ホンダ、カナダにEV生産拠点 電池や部材工場含め総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story