コラム

「遊戯王」作者の事故死に見る、マリンレジャーに潜む危険

2022年07月19日(火)11時30分
多発する水難事故

離岸流に遭遇した時、焦って岸を目指して泳ぐのはNG(写真はイメージです) JodiJacobson-iStock

<範囲の広がるサメ被害、離岸流が発生する海岸、予兆なく落ちる雷──夏の行楽シーズンを前に、マリンレジャーで気をつけたい海に潜む危険とその対応策についておさらいする>

今年はコロナ前の2019年以来、3年ぶりに海開きした海水浴場も多く見られます。現在、大都市を中心にコロナ第7波も急拡大していますが、政府は14日、「現時点では新たな行動制限は考えていない」と経済活動との両立する考えを示しています。

今年は、各地で歴代最速レベルの梅雨明けをしたり、コロナ自粛が昨年よりも緩和されたりしたこともあり、6月下旬から水難事故の報告が目立っています。海辺では今月、著名漫画家の死亡事故もありました。

マリンレジャーで予測がしづらく危険なものには、①海洋生物、②離岸流、③雷があります。夏の行楽シーズンが本格化する前に、海水浴や海釣りに潜む危険と対応策についておさらいしましょう。

相次ぐサメの目撃情報、那覇市の川にも

少年向け漫画「遊☆戯☆王」の作者の高橋和希(本名・高橋一雅)さん(60)は、7月初旬に旅行のため1人で沖縄県を訪れて事故に遭いました。

この作品はシリーズ累計発行部数が4000万部を超え、アニメや映画にもなっています。とりわけ、作品から派生したトレーディングカードゲームは世界中でブームになり、11年にカードの累計販売枚数は251億7000万枚を突破しました。「世界で最も販売枚数の多いトレーディングカードゲーム」として、ギネス世界記録にも認定されています。

6日午前、名護市安和の沖合に、うつぶせで海面に浮かぶ人が発見されました。死亡確認された男性は、水中マスク、シュノーケル、フィンを着用しており、死後数日が経過していました。

同日夜、県警は現場から約12キロ離れた恩納村の名勝「万座毛」近くにレンタカーを見つけました。中に高橋さんの免許証があったため、家族に連絡を取ったところ、駆けつけた家族が遺体は高橋さんであると確認しました。

遺体の下半身と腹部にはサメなどの海洋生物が原因とみられる著しい損傷がありました。左の横腹は噛みちぎられて臓器が飛び出し、臀部は半分くらい失われていたそうです。シュノーケリング中にサメに襲われた可能性もありましたが、11日に司法解剖が行われ、死因は溺死で死後に生物に噛まれたことが分かりました。

沖縄では最近、サメの目撃が相次いでいます。中でも「人食いザメ」として知られているのが、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメの3種類です。ホホジロザメは映画「ジョーズ」で有名です。イタチザメは、口に入るものなら何でも食いちぎります。オオメジロザメは淡水でも生息可能で、先月も那覇市内を流れる川に現れました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story