
ドイツの街角から
ハノーファー・シュプレンゲル美術館 「Niki.草間.村上.Love You For Infinity」特別展─無限の愛をめぐる、アート・アイコンの競演

ハノーファーのシュプレンゲル美術館で始まった特別展「ニキ. 草間.村上・Love You for Infinity」は、現代アート史に残る三者の初共演だ。展覧会タイトルには、3人の対話的な関係性がこめられている。(すべての画像は特別許可を得て筆者撮影)
カラフルな世界に広がる、無限のテーマ
3人の作品を初めて一堂に集めた本展は、愛、生と死、消費、アイデンティティといった普遍的なテーマを、色彩とフォルムで鮮やかに描き出す壮大なコラボレーション。
ニキ・ド・サンファルのフェミニズム、草間彌生の宇宙的反復、村上隆のポップな皮肉。それぞれの世界が交錯し、愛と生命、商業と芸術の境界を問いかける。その空間はまるで、カラフルな"無限の愛"のインスタレーションだ。
2,000平方メートルに広がる空間に、絵画、彫刻、映像、インスタレーションなど、約120点に及ぶ作品群を展示し、光と感情に満ちた「無限の対話」の場となっている。
12の展示エリアを歩くと、喜びや愛、存在への問い、そしてフェミニズムや消費社会といったテーマが、3人の異なる表現を通して次々と現れる。
3人に共通するのは、色彩と形への情熱、そしてアートとポップカルチャー、商業の境界を軽やかに越える姿勢である。ニキ、草間、村上の作品は、愛と死、アイデンティティと消費、喜びと不安、現代社会の光と影を、独自のビジュアル言語で描き出している。
ニキから始まる物語
この展覧会の発端は、2000年にニキがシュプレンゲル美術館に寄贈した400点以上の作品から。寄贈から25周年を迎える今年、同館が誇る世界最大のニキ・コレクションを軸に、草間彌生と村上隆の作品を交えた特別展が企画された。
ちなみに草間と村上が姓で呼ばれるのに対し、ニキはファーストネームで登場する。これは彼女自身が「Niki」という名前でアーティスト活動を行い、個人のアイデンティティと作品を結びつけたことへの敬意を示すものだ。
展示構成「愛、モンスター、そして消費」
12の展示室はテーマごとに構成され、「愛」「ニキの初期作品」「モンスター」「セクシュアリティ」「消費」「ユートピア」などの作品を並置している。
最初の展示室では、家族やパートナーシップ、自然、そして無限への憧れなど、さまざまな形の愛が表現されている。続く空間では、ニキの1960年代の「射撃絵画」が登場し、社会における男女の役割や暴力、解放のテーマが浮かび上がる。
モンスターを扱った章では、ヘビやドラゴン、奇妙な人物像など、カラフルで一見ユーモラスな造形が並ぶが、その裏には人間の不安や内面の深淵が潜んでいる。セクシュアリティの展示では、挑発的な身体表現や、権力と脆さを象徴するオブジェが並び、観る者に強い印象を残す。
3人のアーティスト...

- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko