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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

森が変わるハルツを歩く ・ 展望タワーから見た温暖化の現実と未来

©norikospitznagel  ハルツ展望タワーから見た森林

「森が枯れている」

その言葉を実感する場所は、ドイツ中部、旧東西ドイツの境界にまたがるハルツ山地にあるハルツ展望タワーだ。かつて魔女伝説やブロッケンの妖しさで知られたこの山岳地帯は、いまや気候変動の最前線として注目を集めている。

新名所「ハルツ展望タワー」とは?

ハルツ山地の国立公園を歩けば、深い緑の森はもう「当たり前」ではないことに気がつく。その変化を象徴的に眺められるのが、2024年夏に全面オープンしたハルツ展望タワー「Harzturm(ハルツトゥルム)」だ。公式サイトはこちら

©Nico Mußmann, Tourismusmarketing Niedersachsen GmbH 標高約800メートル、トルフハウス地区の丘にそびえる木造のハルツ展望タワー

高さ65メートルの塔は、ねじれた木の幹を模したデザインが印象的で、木とガラスが融合する未来的な造形は森のシンボルのようでもあり印象的だ。

©Nico Mußmann, Tourismusmarketing Niedersachsen GmbH 上層部に突出するのはガラス張りのスカイウォーク展望台

タワーには2つの展望台があり、魔女伝説で有名なブロッケン山をはじめ、周辺のハルツ山地や国立公園全体を一望できる。最初の展望台「スカイウォーク」までバリアフリーで、リフトを利用できるのもありがたい。

45メートル地点にある「スカイウォーク」は、一瞬足がすくんでしまうが、思い切って前進し絶景を楽しんでほしい。さらに全長110メートルの滑り台「ラサンティア(Rasantia)」では、音と光のエフェクトを感じながら滑走するスリルを味わいたい。(訪問日は悪天候で閉鎖していたため、滑り台は挑戦できなかった)

©Nico Mußmann, Tourismusmarketing Niedersachsen GmbH

家族連れにも人気の観光スポットとして人気を集める一方で、ここから見える「風景の異変」は、訪れる価値の核心にある。

360度のパノラマが移す「変わりゆく森」

展望台から広がる景色は、かつての深い緑とはまるで違う。

このタワーは森林の変貌というよりは観光インフラの一部として注目を集めているが、森林の「荒れ・回復」の指標として引き合いに出されることも多い。周辺景観や森林の健全性を見る上で "見晴らしのポイント" として森林の変貌がよく見える場所だからである。

©norikospitznagel ハルツ展望タワーからの眺め

印象的なのは、山肌を灰色に立ち枯れたスプルース(マツ科トウヒ属の針葉樹)だ。幹だけを残した死木の帯や裸地の転々とする「死の森」が広がり、その合間にようやく芽吹き始めた若木の緑が点在し、かすかな希望の色を添えている。

目の前に広がる光景は、現実とはいえ、まるで映画のワンシーンのような非現実的な印象を受ける。

©norikospitznagel

そんな景観を観光客は「森が荒れてしまった」と落胆する声もあれば、「自然の再生の力を感じる」と希望を語る人もいる。

森を蝕む二重の脅威...

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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