タンゴというと、「男と女」というイメージがつきものです。男女がペアになったとき、男性がリーダーシップをとり女性がフォローする形で踊ることがスタンダードであるタンゴダンス。

しかしここ数年では、今のフェミニズムのムーブメントが波及し、タンゴだってステレオタイプな役割分担に必ずしもはまる必要はない、女性がリーダーシップを取って踊っても良いじゃないか、という考え方が広まっています。

タンゴレッスンでも、リーダーとフォロワーの学ぶステップはそれぞれ違うのですが、積極的に女性がリーダー側を学んだり、また自然と男女で分かれるのではなく、性別に関係なく両方の役割分担を学ぶよう促したりなど、従来の習慣が少しずつ変化しています。

今回私がミュージシャンとして参加したフィラデルフィアでのタンゴフェスティバル。プロダンサーをはじめタンゴに関わる様々な人たちがアルゼンチンや他国からゲストとして参加し、週末の４日間をかけて毎日コンサートやワークショップ、また映画上映会など様々なイベントが行われました。このフェスティバルをオーガナイズしていたのはたったひとりの女性。都市の中心地から少し離れた落ち着いたファミリータウンでタンゴスタジオ・アカデミーを主宰し、タンゴに人生を捧げているMeredith Klainという女性ダンサー。

今年掲げられたフェスティバルのテーマは「Women in tango」。男女ペアのダンサーに加え女性ペアのプロダンサーが３組、女性タンゴバンドの演奏、最終日の目玉イベントであったタンゴオーケストラ演奏も、メンバーの男女比はほぼ半々。またこれからのタンゴについてのパネルディスカッションなど、これまでのイメージを打ち破るような新しいフェスティバルでした。Women's tango festivalではない、ということも特徴です。

ツアー記録フィラデルフィアでのタンゴフェスティバルの様子です4日間連続、毎日ワークショップ、コンサート、ミロンガと盛りだくさんの内容でした。
この日は2組の女性ペアのエキシビジョンが同時に見れまして。アルゼンチンでも珍しいです‼️ pic.twitter.com/mLJM8DXbsz

-- 西原なつき@バンドネオン奏者 (@bandoneona) June 29, 2022

これらのフェスティバルには、近隣都市だけではなく全世界からも人が集まり、友人同士の再会を喜ぶ姿も多く見られました。そして夜はブエノスアイレスのミロンガにいるかのごとく、時間を気にせず一晩中踊り倒す、というもの。一度踊れば仲を深めるのも簡単、友達の輪は世界中にどんどん広がっていきます。

今年の８～９月頃にはブエノスアイレスでも毎年恒例のタンゴフェスティバル・タンゴダンス世界選手権大会が開催される予定です。パンデミック明けということもあり、アルゼンチンは大勢の観光客で賑わうことが予想されます。

日本にも沢山のミロンガ・タンゴレッスンスタジオがあります。私もアルゼンチンでタンゴレッスンをたまに受けるのですが、言葉ではなく体を使った他者とのコミュニケーションは、奥深くて学び甲斐があります。日常に彩りが欲しい方にはうってつけ？！タンゴの世界、ぜひ気軽に覗いてみてくださいね。

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最後にもうひとつ動画を。今回のツアーでは、そんなタンゴ愛好家向けの場所での演奏の他にも、タンゴを聴いたことがない、バンドネオンという楽器なんて知らない、という方々へも演奏を届けることができました。

こちらは、アメリカ在住のタンゴピアニストが主宰する Tango with Winnieというプロジェクト。子供から大人まで、学校やアフタースクールでの音楽鑑賞教室、街角コンサート、老人ホームなどを訪問し演奏して回る一連のイベントのひとつで、もっとタンゴを気軽に、アットホームな雰囲気で楽しんでもらいたいと行ったコンサートの様子です。

こちらはインディアナ滞在中に行った、ホームコンサートの様子。
美味しいご飯、美味しいお酒と音楽と、友達や家族、大事な人とと過ごす週末のひととき。
とっても素敵なコンサートでした。あったかい雰囲気が伝わってくると思います... pic.twitter.com/mx6OrJb0ck

-- 西原なつき@バンドネオン奏者 (@bandoneona) June 15, 2022