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NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

仏教は今を生きる知恵~大愚和尚がNYで語る慈悲と調和

ビジネスと仏教の交差点

起業家としてビジネスを始め、会社が大きくなるにつれて、私は人を育てる立場になりました。知識や技術を教えることはできても、「人間性」はどうやって育てるのか? 誠実であること、時間や約束を守ること、嘘をつかないこと――それを社員にどう伝えればいいのか? そんな問いに直面したとき、私はもう一度、仏教に立ち返ることにしました。

仏教を"生きた教え"として感じたい。そう思った私は、インド、シルクロード、そしてミャンマーを旅しました。とりわけ、ミャンマー中部にあるパガン遺跡※1の景色は、今も忘れられません。11世紀から13世紀にかけて築かれたこの地には、なんと3000以上もの仏塔が広がっています。

パガンの歴史はこうです。かつて、ある王様が「国の人々の心の支えになるような教えが必要だ」と考え、宗教家や占い師たちを集めました。その中から選ばれたのが仏教でした。仏教の教えは「自分で戒律を持ち、自らの心を整え、人々と調和して生きていく」というもの。王はこの精神を体現するために、ストゥーパ(仏塔)を次々と建てたのです。

その姿勢に影響を受け、商人や貴族たちも王より少し小さめの仏塔を建て始めました。あたかも"仏教ゼネコン"とも言えるような建設ブームが起き、結果として3000にものぼる仏塔群が誕生しました。

※パガン遺跡:仏塔が3000以上も築かれた背景には、王が仏教を国の支えとし、税金を仏塔や寺院の建設に還元した政策があります。11世紀、戦乱後の心の支えとして仏教が選ばれ、王自らが約30の仏塔を建立。その姿勢に影響を受けた貴族や商人たちも「功徳を積む」ために競って寄進し、数世紀をかけて壮大な仏教都市が形づくられました。

私はフランスのベルサイユ宮殿やロンドンタワーも訪れました。けれど、そうした建築物の背景には、奴隷のように酷使された人々の存在があります。それに対し、パガンで私が見たのは、仏教という教えを中心に据えながら、経済的にも豊かで、精神的にも調和のとれた社会でした。

歴史書や旅人の記録にも、その穏やかで美しい共同体の姿が残されています。私はシルクロードを旅し、さまざまな文化と出会ってきましたが、仏教ほど「人間の尊厳」や「調和」を大切にする教えはないと実感しました。

寺にいて、座禅を組み、人を迎え、法事や葬儀を行う――それも大切な役割です。しかし、それだけでいいのか? 私は、仏教にはもっと社会そのものを変えていく力があると信じています。

だからこそ、私は「大愚道場」という名前で、仏教の智慧を生かした学びの場を開いています。対象は、一般の方々にとどまりません。「経営マンダラ」には、企業経営者のみならず、政治家、投資家、医師、教師、アーティスト、アスリートなど、各界から有志が集います。彼らが変われば、社会が変わる。そう信じています。

Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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