コラム

こんまりの「片づけ本」がアメリカでバカ売れした理由

2015年07月27日(月)15時40分

 たとえば何かを食べないとか何かを食べるというダイエットで短期的に体重を減らしても、食生活とエクササイズの面で徹底的に生活様式を変えないかぎりは必ずリバウンドする。そして、人生観そのものが変わらないと生活様式は変わらない。こんまり本は、読者の人生観を変えるのでリバウンドしない。

 しかも、その方法がすごくシンプルだ。「Does this spark joy?(これは、ときめきをもたらすか)」と自分に問いかけるだけでいい。アメリカの読者は、まずここに惹かれてしまう。

 しかも、モノを捨てることで、過去のしがらみからも解放させてくれる。

 こんまりの教えに従って片付けを終えた読者は、これまで得たことがないような清々しい気分になる。そして、空っぽになったクロゼットを見ても、お店にかけつけて服やバッグを買いに行く衝動に駆られない自分に驚く。本当に人生が変わってしまったのだ。まるで禅の修行を終えたみたいではないか!

 この本に感銘を受けるのは女性だけではない。大変な読書家であり、著名人にスピーチの指導をしている知人のニック・モーガンも「私の片付けの習慣も近藤麻理恵氏と同様だと知って嬉しく思ったが、まだ足りない。目標は、わが家を日本の茶室か数寄屋くらいすっきりさせることだ」、と感心していた。

 こんまり本を読んだのにまだ人生を変えていない私は、ニックの言葉にますますプレッシャーを感じている。

<写真:©iStockphoto.com/blindtoy99>


 The Life-Changing Magic of Tidying Up:
 The Japanese Art of Decluttering and Organizing

 Marie Kondo
 Ten Speed Press

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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