コラム

ROUND1(ラウンドワン)がアメリカ人を虜にした理由【世界が尊敬する日本人】

2021年12月24日(金)18時00分
ラウンドワンの杉野公彦社長

ラウンドワンの杉野公彦社長

<出発点は、大学在学中に創業したローラースケート場。杉野公彦社長は自身の成功を謙遜するが、アメリカでは朝から行列ができることもあるという>

「やろうと思えば、誰にでもできる」

ボウリングをはじめとした複合レジャー施設を運営し、年間経常利益87億円を上げているラウンドワンの杉野公彦社長は、自身の成功をそう謙遜する。

1980年代、大学在学中に小さなローラースケート場を創業したのが出発点だった。

成功した理由の1つは、ターゲットを研究したこと。平日にも来てくれるのはたいてい大学生以上だ。当時の大学生は、スマホのある今とは違って数日前に遊び場を決めていた。ボウリング派もカラオケ派もゲーセン派もいるグループを、どうやったら1つの場所に引き寄せられるか?

たどり着いた答えが「バラエティー」だった。ビリヤードも卓球もクレーンゲームもある施設を造れば、「取りあえず行こう」となる。拡大を続けた今、店舗によっては200種類以上の遊びが用意されている。

現在、国内には99店舗あり、2009年にはアメリカにも進出し46店舗を出店。さらにロシアと中国にも進出している。アメリカに目を向けたのは、人口減少が進む国内市場に限界を感じたからだ。

意外にもアメリカには家族で楽しめるこのような複合レジャー施設がなかったため、ラウンドワンは大当たり。今や朝から行列ができることもあるという盛況ぶりだ。

アメリカでの成功の秘訣は飲食の価格を抑えたことにもある。ネットのレビューでは場内の「1ドル」アイスが大人気。ビールを飲みながら遊ぶ人が多い傾向に合わせて一缶3ドルに抑えたことも、アメリカ人の心を捉えた。

アパレルや百貨店の不人気により、モールでテナントが撤退しているのに目を付けたのも大きい。跡地を安く手に入れ、繁盛しやすい場所でさまざまな遊びを提供している。

ただ、いい人材を集めて値段もほどほどに設定し、宣伝を適切に行えば「誰にでも」同じように成功できるのだろうか? いや、なかなか簡単にまねできるものでもない。

Masahiko Sugino
杉野公彦
●ラウンドワン代表取締役社長

<2021年8月10日/17日号掲載>

2021081017issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2021年8月10日/17日号は「世界が尊敬する日本人100」特集。免疫学者から歌舞伎役者、ユーチューバーまで、コロナ禍に負けず輝きを放つ日本の天才・異才・奇才100人

【話題の記事】
インド映画界には、撮影監督として引っ張りだこの日本人がいる
日本の元セクシー女優、フィリピンに遊びに行ったら人生が急展開した

プロフィール

トニー・ラズロ

ベストセラーとなったコミックエッセイ『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ、メディアファクトリー)の主人公。1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点にジャーナリスト、講師として活動する。著書に『ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し』『英語にあきたら多言語を!――ポリグロットの真実』『手に持って、行こう――ダーリンの手仕事にっぽん』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

イケア、米国内の工場から調達拡大へ 関税で輸入コス

ビジネス

金融政策で金利差縮めていってもらいたい=円安巡り小

ビジネス

アングル:欧米小売、インフレ下でも有名人起用や価格

ビジネス

日経平均は4日ぶり反落、一時800円超安 利益確定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story