日本では起こりえなかった「交渉の決裂」...言葉に宿る責任感とは?

geralt-pixabay
<ゼレンスキー大統領とトランプ大統領の会談のような決裂が、日本では想定しづらいと駐日ジョージア大使が考える理由について>
先日、ウクライナのゼレンスキー大統領とアメリカのトランプ大統領の会談が決裂に終わったことが世界中に波紋を呼んだ。
しかし、日本ではこのような事態は考えにくいであろうとも思っている。というのも、日本では「言葉の重み」が非常に重視されているからだ。
私が早稲田大学卒業後に新卒社員として入社したのは、日本の伝統的な企業であるキッコーマンだった。入社後、営業部門に配属されたのだが、特に印象深かったのが大手スーパーのバイヤーとの商談であった。
大規模会場で行われた商談の場には各社の営業担当者が一堂に会し、各部門のバイヤーに企画を提案していく。新人の私だけでなく、先輩社員も緊張感を漂わせるなか、新入社員の私を軽く紹介した後、企画書1枚を提示して淡々と先輩がプレゼンを始めたのだった。
そして、その説明が終わるとバイヤーはうなずいて「よし、分かった」と一言だけ。先輩が「ありがとうございます!」とすかさず返事し、わずか数分で商談は終了したのだった。
あまりにあっさり終わるので、何が起きたのかと私が驚愕しているところに先輩は「よかった! 決まった! よし、この後は、お祝いに僕が行きつけのメイド喫茶に行こう!」と言うではないか(「えっ、メイド喫茶?」と思ったのはさておき......)。
状況がうまくのみ込めなかったため、商談会場を出た後に「これで商品の導入数や店舗、棚の配置、価格などは、全て決まったのですか? 契約書には何もサインしないのですか?」と尋ねると、先輩は涼しい顔で「決まったよ」とだけ答えるのだった。
あれはいったいどういうことだったのだろうか。
参政党の「日本人ファースト」は日本第一党の「日本第一主義」と同じに思える 2025.07.18
日本は戦争で荒廃したイランの後に続くのか 2025.07.16
アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が象徴する、フランスで続く日本ブーム 2025.07.16
日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」身近すぎて見えないこともある 2025.07.11
突出した知的能力や創造性を持つ「ギフテッド」を埋没させるな 2025.06.28
在日外国人は米に困っていないし、「令和のコメ騒動」に無関心 2025.06.16
大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ 2025.06.10