コラム

三島、川端、大江、谷崎だけじゃない......若い世代の日本文学がフランスで愛される理由

2025年02月19日(水)17時55分
西村カリン(ジャーナリスト)

(左から)「エスカパド文学賞」候補の水林章『Suite inoubliable(忘れがたき組曲)』、東野圭吾『白鳥とコウモリ』、宇佐見りん『推し、燃ゆ』、河﨑秋子『颶風(ぐふう)の王』、小川糸『ライオンのおやつ』 COURTESY OF CATHY PESTY, PRIX ESCAPADES

<フランスでは、日本語の本は英語に次いで多く翻訳されている。日本の文化や社会のことがよく表れている小説は、フランス人読者に新鮮な驚きをもたらす>

2月の上旬に1年ぶりにフランスに行った。遊びに行ったわけではない。日本を舞台にした小説『LʼAffaire Midori(みどり事件)』を執筆した私は、今年の「エスカパド文学賞」の選考委員長を務めている。その賞の選考で、日本文学のファンたちに会うための出張だった。

「エスカパド文学賞」はノルマンディー地方で2年に1回開催され、ある国の小説を5作選んでその中の1作に授賞する。芥川賞など多くの文学賞とは違って、選考委員はプロではなく150人の一般読者だ。彼らがそれぞれの小説を読んで投票する。


今回の候補は、宇佐見りん『推し、燃ゆ』、河﨑秋子『颶風(ぐふう)の王』、小川糸『ライオンのおやつ』、東野圭吾『白鳥とコウモリ』、水林章『Suite inoubliable(忘れがたき組曲)』(オリジナルはフランス語、未邦訳)の5作(写真)で、受賞作は5月に決める。全ての選考委員と同じように、私も5作をフランス語で読んだ。

数十人の選考委員と議論をしたが、各作品について「すごかった」「あまり興味がなかった」と意見が分かれるのが興味深かった。「家族内の人間関係が不思議」「上下関係に驚く」といった声もあれば、『推し、燃ゆ』を読んで「日本のアイドルビジネスはおかしい」と指摘する人もいた。『忘れがたき組曲』をめぐっては「戦時中、一部の日本国民が戦争反対の立場だったとは知らなかった」と言う読者が多かった。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中絶禁止は州憲法違反、米ワイオミング州最高裁が無効

ワールド

米FDA、健康増進目的のウェアラブル端末に対する規

ビジネス

米新興ニンバス、イーライリリーと肥満症経口薬の開発

ワールド

イスラエル外相がソマリランドを公式訪問、ソマリアは
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story