コラム

孤独を好み、孤独に強い......日本人は「孤独耐性」が高すぎる

2021年03月24日(水)15時20分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
孤独な会社員

自宅でおとなしくしていられるのは日本人くらい? Oleg Elkov/iStock.

<日本の「孤独・孤立対策担当室」設置が海外で話題になった。用事がなければ親に電話もせず、1人でデスクランチをし、1人で映画を見たり、1人旅をしたりする。仕事の後も休日も、1人で過ごす日本人が多いことに驚く>

2月19日、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」が設置された。だが日本ではあまり大きなニュースにならずSNS上でも話題にならず、恥ずかしながら私もイラン人の友人から知らされるまで知らなかった。海外ではニュースになっていたというのに。

私が日本人に対して持つ印象の中でトップ3に入るものの1つが、日本人は孤独を好み、孤独に強い、ということだ。仕事の後も休日も1人で過ごす人が多いことに驚く。1人暮らしでも用事がなければ親に電話もしないし、たまに電話しても長電話するでもない。1人で外食チェーンで食べたり、1人でデスクランチをしたり、1人で映画を見たり、1人旅をしたりする。

人生の半分近くをイランで過ごした私には、いまだに受け入れ難いことである。もちろん日本人の中にも、群れるのが好き、家に1人でいられない、という人は多い。だが、そういう人の割合は、イラン人に比べて圧倒的に少ない。イラン人も1人で静かに過ごすことを好む人はいるが、大多数の人は、いつも誰かと一緒にいたい、一緒にいられないならば電話で話をしていたい、というメンタリティーの持ち主だ。

家族や友人と集まりたくなるのが人間のさが

だから電話は常に長電話だし、友人とでも誰とでも可能な限りビデオで顔を見ながら話すし、当然話すときはスピーカーフォンである。私はほぼ毎週末、母と兄との3者ビデオ通話で2~3時間話すのだが、日本人である私の妻にとっては、その長さとうるささが最初は大きなカルチャーショックだったらしい。

このコロナ禍で、法的な拘束力や罰則がなくても外出を控えて自宅でおとなしくしていられるのは日本人くらいだと思う。どの国も、自国民にソーシャルディスタンス(社会的距離)を取らせるのに苦心している。いくら罰則を強化して、外出禁止を命令しても、隠れて集まる人たちが続出している。実際、イランでも行動規制をかけているが、国民は自宅でおとなしくしていることにすっかり飽きていて、通勤もパーティーも社交も、友人・親戚間のお泊まり会もすっかり元のとおりに復活しているようだ。

その結果として、最近も有名な40代の元サッカー選手2人が、新型コロナウイルスに感染して死亡している。そういうイランの状況も今の私にとっては驚きではあるのだが、時には家族や友人と集まりたくなるのが人間のさがであり、むしろ真面目にステイホームしていられる日本人のほうが特殊なのだろう。one for all, all for one の精神は、日本人ならではの素晴らしい特質だ。と同時に心配にもなる。あまりにも孤独になり過ぎてしまうのではないか、と。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州・ウクライナの米提案修正、和平の可能性高めず=

ワールド

ウクライナ協議は「生産的」、ウィットコフ米特使が評

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、今後数カ月の金利据え置き

ビジネス

再送-〔アングル〕日銀、追加利上げへ慎重に時機探る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story