最新記事
ダム建設

再エネ政策のためなら地元の伝統も文化も破壊する中国...周辺国も反対するダム建設のリスク

Mega Dam, Mega Cost

2025年7月29日(火)15時05分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
ヤルンツァンポ川の上流域

ダム建設の予定されるヤルンツァンポ川の上流域(23年5月、チベット自治区) LI LINーCHINA NEWS SERVICEーVCG/GETTY IMAGES

<中国はチベット自治区で世界最大となる水力発電所を建設している。自己中心的な建設プロジェクトは、国内外にどれほどの悪影響を及ぼすのか>

去る7月19日、中国政府はチベット自治区を流れるヤルンツァンポ川上流に巨大ダムを建設すると発表した。

完成すれば文句なしに世界最大の発電用ダムとなる。総建設費は現時点の推定で1670億ドル、世界中で史上最も高価なダムとなる見通しだ。年間の発電量は3000億キロワット時で、現時点の中国のエネルギー需要の約4%を満たすとされる。


巨大ダムの建設には賛否両論がある。水力発電は二酸化炭素を排出しないクリーンな電力源だが、ダム建設は周囲の生態系にも社会にも大きな影響を及ぼすからだ。

現状で世界最大の三峡ダム(湖北省、2009年完成)では、建設時に約130万人が立ち退きを強いられた。また1975年には河南省で、比べものにならないほど小さなダムの決壊で約23万の犠牲者が出た。それほどまでにダム建設のリスクは大きい。

しかも今回はチベットが舞台だ。「自治区」とは名ばかりで、中国政府は何十年も前から民族的チベット人の文化と宗教を弾圧し、住民の強制移住を進めてきた。昨年も、別のダム建設への反対運動を力ずくでつぶしている。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米6月求人件数、27.5万件減 関税不安で採用も減

ワールド

再送米中、関税一時停止継続で合意 首脳会談の可能性

ワールド

ガザで最悪の飢餓も、国際監視組織が警告 危機回避へ

ビジネス

米6月モノの貿易赤字、2年ぶりの低水準 輸入減で8
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    タイ・カンボジア国境紛争の根本原因...そもそもの発…
  • 5
    グランドキャニオンを焼いた山火事...待望の大雨のあ…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「出生率が高い国」はどこ?
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 5
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 6
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中