最新記事
アメリカ

【就任100日】「異なる世界線」の妄想を好むトランプ...批判派も評価していた政治的洞察力は何処へ

The Emperor Has No Instincts | Opinion

2025年5月2日(金)17時50分
トム・ロジャーズ

存在しているのは物価高が加速しているという現実

一体、トランプの政治的洞察力はどこに行ってしまったのか。物価に対する世論の関心を軽視しても問題ないと考えたのだろうか。

4月第1週の大規模関税発表以前から、彼の経済運営に関する支持率は低迷していた。消費者たちは依然として物価の高騰とインフレに不安を抱いていた。多くの人々は、トランプが高騰する物価を抑え、かつてのように安価な卵を食卓に並べてくれると信じていた。経済政策こそがトランプが最も支持された部分だからだ。


それにもかかわらず、トランプは物価高騰やインフレの解消とは真逆の行動を取った。

トランプは何を考えていたのだろうか。自分が皇帝であり、間違いを犯すことなどないと考えていたのか。経済運営に対する国民の評価が下がることはないと思い込んでいたのか。国民は生活費の高さよりも他の課題を重視すると踏んでいたのか。

ほぼ完全雇用の状況にあって、関税によって年間数千ドルの追加負担が生じようとも、国民は製造業雇用の創出という遠い将来の可能性のほうを重要視すると考えたのか。

あの称賛された政治的洞察力は一体どこへ行ってしまったのか。

トランプにはもう、政治的洞察力はない。トランプは「異なる世界線」を創り出し、現実とは違う世界を妄想することを好む。しかし、消費者物価の高さが家計を直撃しているという現実こそ、MAGA支持層を含め、アメリカ国民が否応なく直面しなければならない現実だ。

これからトランプ関税が物価高をもたらし、それを前政権に責任転嫁できなくなったとき、皇帝が裸であるという事実が痛ましいほど明らかになるだろう。いや、すでにその皇帝に政治的洞察力などないのは明らかなのだが。

[筆者]
トム・ロジャース(Tom Rogers)
クラウドAI関連企業Claigridの会長であり、米Newsweekの編集幹部。CNBCの創設者、コメンテーター。MSNBCを設立し、TiVoの元CEOでもある。アメリカの民主主義を守ることを目的とした団体「Keep Our Republic」のメンバーであり、アメリカ法曹協会の民主主義に関するタスクフォースのメンバーでもある。

(本稿で示された見解は筆者個人によるものです)

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

逮捕475人で大半が韓国籍、米で建設中の現代自工場

ワールド

FRB議長候補、ハセット・ウォーシュ・ウォーラーの

ワールド

アングル:雇用激減するメキシコ国境の町、トランプ関

ビジネス

米国株式市場=小幅安、景気先行き懸念が重し 利下げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 5
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 6
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 7
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 8
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 9
    ハイカーグループに向かってクマ猛ダッシュ、砂塵舞…
  • 10
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 7
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨッ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中