最新記事
中東

イスラエルが空と陸からシリアを攻撃──14年の内戦を経て立ち上がった暫定政府の行方

Israel Is Escalating Its War in Syria

2025年4月1日(火)12時12分
チャールズ・リスター(中東問題研究所上級研究員)
イスラエルが空と陸からシリアを攻撃、約14年間の内戦を経た暫定政府の行方

イスラエルが占領するゴラン高原を進むイスラエル軍の戦車 RONEN ZVULUNーREUTERS

<イスラエル軍によるシリア南西部への地上侵攻は70回以上、空爆の回数は30回...暫定政府は穏健でイランの影響力も消えた今、イスラエルが攻勢を強める必然性は全くないが...>

約14年間の内戦を経て、暫定政府の下でようやく国を立て直そうとしているシリアに対し、イスラエルが空と陸両方からの攻勢を強めている。この6週間、イスラエル軍によるシリア南西部への地上侵攻は70回以上を数え、空爆の回数は30回を超えた。

3月25日には71回目のイスラエル軍の地上侵攻が行われ、状況は劇的に悪化した。直後に地元関係者から筆者が直接聞いた話によれば、シリア側の民兵約10人が立ち向かい、コヤ村にイスラエル軍が入るのを阻止しようとして空に向かって発砲したという。


だがイスラエル軍は、民兵が自分たちに向けて発砲してきたと主張。村に戦車砲を撃ち込んだほか空爆を行い、少なくとも6人を死亡させた。

昨年末にシリアのバシャル・アサド大統領の政権が崩壊したことを受け、イスラエルはシリア各地に10日間で600回に上る空爆を行った。シリア全土のほぼ全ての軍事基地や軍事拠点を空から攻撃し、地上侵攻した部隊は1974年に設置された緩衝地帯を占領した。

2月下旬には、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とイスラエル・カッツ国防相が「シリア南部の完全な非武装化」という新たな目標を明らかにした。また、シリア国内のドルーズ派(イスラム教の一派)を保護する決意を繰り返し口にしている。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米長官、印・パキスタンに緊張緩和要請 カシミール襲

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株の底堅さ好感 大手ハ

ワールド

一部の関税合意は数週間以内、中国とは協議していない

ビジネス

米キャタピラー第1四半期、収益が予想下回る 関税影
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中