最新記事
スキャンダル

タイの漁師にブラジルの砂丘、他にも... フィリピン観光PRの新映像、一部国外で撮影されていた

2023年7月10日(月)17時30分
青葉やまと
ボラカイ島のビーチ

コロナ禍前に観光客で賑わうボラカイ島のビーチ(2018年4月) Erik De Castro-REUTERS

<現地ブロガーが指摘し、世界的なスキャンダルに。制作会社が撮影地を確認しないまま、数々の映像素材をつなぎ込んでいた>

【動画】物議を醸し、すでに削除されたフィリピン観光省のプロモーション映像

フィリピン観光省が新たにスタートした観光キャンペーン「Love the Philippines」の公式プロモーション映像において、フィリピン国外の映像が多数含まれていることが判明した。英BBCによると、制作元の現地広告代理店が謝罪。フィリピン観光省は動画の公開を取り下げ、現在映像を精査している。

このキャンペーンは6月27日に同国観光省が始動したもので、動画はその一翼を担うはずだった。問題の動画は、フィリピンの自然や文化などの魅力を1分45秒ほどで足早に紹介している。それぞれ1〜2秒程度のごく短いショットを編集でつなぎ込み、現地の観光スポットや訪れた旅行客らがアクティビティに興じる様子を次々に映し出すスタイルだ。

動画ではフィリピンの伝統舞踊や食文化、そしてスキューバ・ダイビングなど、国内各地のスポットで撮影された映像素材がふんだんに使用されている。しかしながら、こうした本来の映像のあいだに混ぜ込むようにして、ブラジルの砂丘で行われたバギー走行のアクティビティや、インドネシアのバリ島の美しい棚田の空撮ショット、そしてスイスの空港に降り立つ旅客機の映像などを使用していた。

バリ島で撮影された棚田や、ブラジルを駆けるバギー

動画は開始とともに、日の出や波しぶきなどの抽象的な映像をめまぐるしく映し出す。フィリピンとみられる都市部の空撮映像を経て、16秒時点で棚田の空撮ショットに切り替わる。斜面に構える水の張った田に空が反射する、美しい光景だ。だが、これはインドネシアのバリ島の棚田だ。

さらに、3つの短いショットを挟んだ3秒後の19秒時点では、朝日または夕陽を背景に、シルエット姿の漁師が水面に投網を打つ印象的な映像が挿入されている。これもフィリピンではなく、タイで行われている漁業の様子を撮影したものだ。

このほか判明しているものだけで、スイスの空港での着陸シーン、場所は特定できないが明らかにフィリピンのものではないイルカのジャンプシーン、ブラジルの砂丘を駆けるバギー、アラブ首長国連邦の映像など、フィリピン国外で撮影された映像が随所に混入している。

11年ぶりの新キャンペーンに冷や水

AFP通信は、「AFPのファクトチェック・チームが分析したところ、動画にはブラジル、インドネシア、スイス、アラブ首長国連邦の場所が映っていた」と述べ、国外の映像が使用されていることは事実であると裏付けている。

この問題は動画公開からわずか5日後の7月2日、フィリピンのブロガーであるサス・ロガンド・サソット氏がFacebookへの投稿を通じて最初に指摘した。同日AFPがこれを取り上げ、CNNやBBCなど海外の主要報道機関が続いている。

在オーストラリア・フィリピン人向けのニュースサイト「フィルタイムス」によると、新キャンペーンはパンデミックの収束にタイミングを合わせる形で、過去に11年間使用されてきた「It's more fun in the Philippines(フィリピンならもっと楽しい)」キャンペーンを一新するものだったという。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米政権、「第三世界諸国」からの移民を恒久的に停止へ

ワールド

中国万科をS&Pが格下げ、元建て社債は過去最安値に

ワールド

鳥インフルのパンデミック、コロナ禍より深刻な可能性

ワールド

印マヒンドラ&マヒンドラ、新型電動SUV発売 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中