最新記事

地政学

「欧米人はどう見られているかを真剣に考えるべき」中国人研究者から見た、ウクライナ戦争と世界地図

HOW CHINA SEES IT

2023年3月3日(金)12時00分
マーク・レナード(欧州外交評議会事務局長)

アメリカは自らが決めた優先順位にヨーロッパや日本や韓国を縛り付け、ロシアを孤立させ、中国に領土保全といった問題について立場を明確にするよう迫ってきた。中国も自国に対するロシアの従属的立場を強化し、グローバルサウス(途上国の大半が位置する南半球)で非同盟を支持する国を増やしてきた。

ヨーロッパの指導者たちは21世紀のチャーチルを気取るが、中国人からみれば地政学的ゲームの駒にすぎない。ウクライナの戦争は、新型コロナによる混乱や米中の覇権争いに比べれば大したことはないというのが、筆者が話した中国人研究者らの一致した見解だ。

もちろん、前述の中国人研究者の主張には反論の余地がある。ヨーロッパは彼が暗示する以上に主体性があり、ロシアの侵略に対するヨーロッパの積極的対応はこの戦争が大規模な国境紛争に発展するのを防ぐだろう。

それでも、中国人の見方が欧米人とは大きく違うことは一考に値する。欧米人は世界からどうみられているかをもっと真剣に考えるべきだ。

そうすれば、欧米の対ロシア制裁を支持しない国がある理由が分かるかもしれない。「支配権回復」の駆け引きが増す今、欧米以外の国がウクライナの重要性を軽視するのはそう意外ではない。

欧米人にとってはルールに基づく秩序を守る英雄的行為でも、非欧米諸国の人々からみれば急速に多極化する世界における欧米の覇権の最後のあがきなのだ。

©Project Syndicate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、総裁「状況は正しい方向」 利

ビジネス

FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼

ワールド

ロシア戦術核兵器の演習計画、プーチン氏「異例ではな

ワールド

英世論調査、労働党リード拡大 地方選惨敗の与党に3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 5

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 6

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 7

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中