最新記事
少子化対策

子どもへの冷たさが「異次元」の日本政治

2023年1月11日(水)10時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
小学校授業

現状の日本の教育、子育て支援政策はとても満足なレベルとは言えない monkeybusinessimages/iStock.

<岸田首相は「異次元の少子化対策」を打ち出したが、これまでの日本の子ども、子育てへの対策は異次元のレベルで低い>

岸田文雄首相は、新年の政策課題として「異次元の少子化対策」を掲げている。児童手当などの経済的支援の強化、学童保育などの子育てサービスの強化、育休などの働き方改革の推進、という3つの柱からなる。これらを実現すべく、子ども予算も倍増するとのことだ。

その財源は定かでないが、次世代を担う子どものための予算を増やす余地が大ありなのは確かだ。国の教育費支出の対GDP比率をみると日本は2.85%で、OECD平均値の4.07%よりだいぶ低い(2019年)。ノルウェーの6.38%の半分にも満たず、子どもが少ないという人口構成で説明できるものではない。

国がカネを出さないとなると、学校の学費が高くなるなど、子育て費用の負担は各家庭にのしかかる。日本の子育て世帯の生活苦は数字に出ており、ISSP(国際社会調査プログラム)が2019年に実施した調査によると、子がいる25~54歳の62.3%が「世帯の収入の範囲で生活をやりくりするのが難しい」と答えている。調査対象となった29カ国の平均値(39.7%)よりもかなり高い。

この2つの指標が高い順に各国を並べた時、日本がどういう位置になるかを見ると愕然とする。<図1>がそれで、赤色が日本の位置を指す。

data230116-chart0102.png

公的教育費支出の対GDP比は、日本は下から2番目となっている。絶対水準の低さもさることながら、国際順位も低い。これは毎年のことだ。子どもが少ないのだから教育費支出は少なくて当然と思われるかもしれないが、各国の子ども人口比率との間に相関関係はない。

一方、生活が苦しいと答えた子育て世帯の割合は上から2番目で、左の図とは対照的な位置にある。公的な支援が乏しいと、家計の教育費支出は増えざるを得ず、生活が苦しくなるのは道理だ。ちなみに日本では、子ありの世帯のほうが子なしの世帯より生活苦の割合が高く、他国と比べてその差も大きい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中