最新記事

教育

教育現場にこそ求められる、教員業務の効率化

2022年2月16日(水)11時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
教室での授業

国際的に比較すると日本の教員の授業以外の業務の割合は特異的に高い paulaphoto/iStock.

<日本の教員の仕事量は国際的に見て際立って多く、しかもその半分が事務作業や部活指導など授業・授業準備以外の業務>

人手不足の波は学校にも及び、教員不足が言われている。足りないのは産休代替教員だ。若手の教員が増え、結婚・出産による産休取得者が増加する一方で、教員採用試験の競争率低下により、受験浪人の講師登録者は減っていることが背景にある。自治体の教育委員会は、退職者に声掛けをしたり、管理職に授業を持たせたりと、急場しのぎの策に奔走している。

後々のことを考えると、今後は正規の教員も含め,教員不足が一層深刻化するおそれがある。教員の過重労働が知れ渡り、若者の「教員離れ」が進んでいるという。教員採用試験の競争率低下はその表れで、公立小学校試験の競争率は2000年度では12.5倍だったが21年度では2.6倍だ。採用者の増加が主な要因だが、試験受験者も減少している。

外国の人ならこう言うかもしれない。「日本で教員不足が起きているのは、教員の仕事が多すぎるからではないか」と。こなすべき業務(仕事)が多ければ、それだけ多くの人員が要るのは道理だ。教員の仕事量は、教員の人数(頭数)と労働時間の積で表せる。日本の中学校で言うと、生徒100人あたりの教員数は7.8人で、教員の週平均勤務時間は56.0時間なので、2つの積は436.8となる。教員がこれだけ仕事することで学校が回っている。<表1>は、この数値を国ごとに比べたものだ。

data220216-chart01.png

日本の教員の仕事量は7カ国で最も多い。南米のブラジルは教員数が少なく、労働時間も日本の半分ほどで、日本の3分の1にも満たない仕事量で学校を回している。韓国と欧米は両者の間に分布しているが、日本の教員の仕事量は国際的に見て際立って多い。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前年比3.4%上昇に鈍化 利下げ期

ビジネス

米小売売上高4月は前月比横ばい、ガソリン高騰で他支

ワールド

スロバキア首相銃撃され「生命の危機」、犯人拘束 動

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中