最新記事

イギリス

日英の貿易協定は布石、アジアにのめり込む英ジョンソン首相の計算

JOHNSON’S GLOBAL BRITAIN

2021年7月16日(金)17時17分
ウィリアム・アンダーヒル(在英ジャーナリスト)

もっと厄介なのはEUとの関係だ。イギリスとEUは昨年末に貿易などの協定で合意に達し、延々と続いた「離婚協議」にようやく決着がついた。だが、両者の溝が埋まったとは言い難い。

対立点の1つは北アイルランドの扱いだ。英領北アイルランドはEU加盟国のアイルランドと地続き。人と物の流れが制限されれば、不満が噴き出し、かつて英政府を悩ませた北アイルランド紛争が再燃しかねない。

問題はそれだけではない。イングランド、北アイルランド、ウェールズ、スコットランドの4つの地域から成るイギリスは、EU離脱で分裂のリスクを抱えることになった。今年5月にはスコットランド議会選で、分離独立とEU復帰を目指す勢力が過半数を獲得。スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は独立の是非を問う住民投票の再実施を目指しており、ジョンソンとの対決は避けられそうにない。

また政府のコロナ対策を検証する独立調査が来春にも実施される予定だが、初期のジョンソンの対応を元顧問が痛烈に批判しており、厳しい評価が下されそうな雲行きだ。

ほかにも住宅危機や労働力不足など問題は山積。貿易協定を次々に結んだところで、こうした問題は解決しない。

20240514issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月14日号(5月8日発売)は「岸田のホンネ」特集。金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口……岸田文雄首相が本誌単独取材で語った「転換点の日本」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米住宅供給問題、高水準の政策金利で複雑化=ミネアポ

ビジネス

米金融政策は「引き締め的」、物価下押し圧力に=シカ

ワールド

ガザ休戦合意に向けた取り組み、振り出しに戻る=ハマ

ビジネス

マクドナルド、米国内で5ドルのセットメニュー開始か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 9

    「一番マシ」な政党だったはずが...一党長期政権支配…

  • 10

    「妻の行動で国民に心配かけたことを謝罪」 韓国ユン…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中