最新記事

中国

中国広州で発生したコロナ新規感染者への対処に見る中国の姿勢

2021年6月2日(水)19時24分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
広州市のPCR検査

2021年5月に中国広州市でコロナ新規感染者が発生し、PCR検査を受ける住民 cnsphoto/REUTERS

広州市で新規感染者が数名出ると、周辺220万人全員にPCR検査をし、感染者の足跡をスマホで公開して一気に阻止に向かおうとしている。片や日本政府には何としてもコロナを阻止して見せるという意気込みが見られない。

新規感染者を発見した経緯

5月18日、最初の新規感染者と見られる中国広東省の広州市茘湾(リーワン)区に住んでいた「患者1」は、体調不良のため風邪薬を服用した。翌19日には近所の「又一間茶点軒」という店で「早茶(ザオ・ツァー)」(お茶を飲みながら取る軽い朝食)をした。 

5月20日の午後、どうも変だと思って徒歩で発熱検診に行ったところ、PCR検査を受けた。その夜、初歩的段階で「コロナ陽性」と判明。翌21日、本格的な検査の結果「コロナ陽性」と確定し、「患者1」は隔離治療に入った。

一方、「患者3」(おばあちゃん)は孫の「患者4」(小学生)を連れて25日に病院に行った。孫が発熱したので病院に行ったのだが、PCR検査をしたところ「コロナ陽性」だったので、「おばあちゃん」も検査したところ、やはり陽性だった(注:「患者2」は一連の新規感染者とは経路が異なるため、ここでは省く)。

「患者3」は、5月19日に、「患者1」と同じ店で「早茶」を取っていたことが分かり、この店でクラスターが発生した可能性があるとして、保健衛生当局が5月26日、27日の2日間で、茘湾区の住民120万人に対してPCR検査を行った。茘湾区の人口は約120万人なので、ほぼ全員に対してPCR検査をしたことになる。

感染者がさらに数名増え始めたので茘湾区のすぐ隣にある海珠区の100万人全員に対しても5月30日から6月1日にかけてPCR検査を行ったので、合計で220万人に対し検査を完了させた。その結果、無症状者も含めて、「コロナ陽性」は6月1日朝までのデータで24人に上る。

新規感染者の足跡をスマホで公開

さらなる濃厚接触者を特定するため、匿名ではあるが当局は患者の行動範囲や軌跡を追跡し、テンセントやアリババなどのIT企業のアプリで公表している。日本人には馴染みが薄いと思われるが、最も信用できるのが「今日頭条」というサイトで、ここではコロナに関しても全てをフォローすることができる。

たとえば患者が行った場所、クラスターが発生した場所などが、以下のようなマップで示されている。

endo20210602161601.jpg
ウェブサイト「今日頭条」に載っている感染者の足跡

この場所に近づくとスマホのアラームが鳴り、警告を出してくれる。

たとえば以下の情報は、筆者が日本からアクセスしたので、「あなたは警戒点から何キロ離れています」という情報が数字で示される。

endo20210602161602.jpg
「今日頭条」に載っている、警戒点からのスマホ使用者の距離

ネット回線確保と封鎖による物資配給体制

1日50万人以上の検査に対応できるようにするため、ネット回線の確保に力を入れ24時間体制で稼働させている

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中