最新記事

中国

中国広州で発生したコロナ新規感染者への対処に見る中国の姿勢

2021年6月2日(水)19時24分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

また濃厚接触者がいるエリアは封鎖し、日常生活品は全て地元政府が配送している

全員「インド変異株」だが、最初の感染ルートは?

5月31日、広州市政府新聞弁公室は記者発表を行い、広州市の黎明副市長が現況に関する報告をした。それによれば、今般の広州市のコロナ新規感染はほぼ全員が「インド変異株」に由来していたことが判明したとのこと。

しかし「患者1」は海外渡航しておらず、「患者1」の感染ルートに関しては、まだ確定できていないと5月31日の新華社は語っている

一方では広東省の江門市人民政府のウェブサイトが奇妙な推測も行っている。

それは「患者1」の感染ルートは、5月10日に広州市の空港における隔離から解除されて広西チワン族自治区に戻った寧某氏が感染源ではないかという推理だ。寧某氏は4月25日にルワンダからドバイ経由で中国に戻り、広西の最寄りの国際空港である広州空港に入境した。ルワンダを出発した時はコロナ陰性だった。それでも規則により広州空港近く茘湾区にある隔離ホテルで2週間隔離を受けた。2週間後の5月10日に陰性であることが確認され隔離を解かれて広西に戻った。茘湾区で新規感染者が出たため、しかし広州市の健康衛生当局は茘湾区の隔離ホテルから解除された海外からの帰国者全員に対して再度のPCR検査を5月25日にお願いしたところ、寧某氏の陽性が確認されたという。

今のところは、インド変異株が広州市に入ってくる可能性は他にないことから、感染源は寧某氏の可能性が浮上している。ルワンダ出発の時は陰性だったのでドバイで感染したことが疑われている。

だとするとインド変異株の潜伏期間は異常に長いことが考えられる。

感染スピードが速く、毒性も強いとされるが、一方では潜伏期間が長いウイルスも内在しているかもしれないとなると、東京五輪開催にも影響をもたらすだろう。

中国でのワクチン接種の進み具合

一方、6月1日の中国人民政府の発表によれば、5月30日までに中国全土におけるワクチン接種の回数は6.39億回に及んでいるとのこと。この中には1回接種や2回接種者も含まれている。5月に入ってからの全国の新規感染者数の累計は50例を超えているため、5月に入ってからは毎日平均1247万回のワクチン接種が行われているとのことだ。4月の平均回数と比べると2.58倍になっているという。

ちなみに広東省のワクチン接種回数は5000万回で、そのうち1200万人がワクチン接種の全プロセスを終えているとのことだ 。ちなみに広東省の人口は1.2億人なので、ほぼ日本の全人口に匹敵する。

もっとも、5月26日から大規模PCR検査に入ったので、検査のために「密」を招く可能性もあり、そこにワクチン接種に殺到する住民が加わったので、ワクチン接種会場では雑踏事故が発生しそうな状況に至り、その区域のワクチン接種を一時中断したそうだ。すると「一回目の接種を終わらせ、ちょうど2回目の接種に入ろうとしているのに、ここで中断されたら、一体どうすればいいんだ!」という類のクレームがネットに溢れた。報道では「コロナで死ぬのを免れるために、雑踏事故で死んだのでは本末転倒だろう」などと書いている。

一回接種型ワクチンの出現

一方中国では、一回の接種で完了する一回接種型ワクチンが出現している。その接種は5月13日に上海市で始まったのを皮切りに、北京市、天津市、浙江省、河南省、安徽省などでも実施されており、5月30日には河北省石家庄でも実施された

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中